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ありすとてれす  作者: 春乃
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69話 てれすとお母さん

 ありすとありすのお母さんと別れてから、電車に乗って、わたしは自宅であるマンションに帰って来た。エレベーターで上に上がって、自室の前でカギを取り出す。

 カギを開けて玄関に入ると、なかからバタバタとした忙しい音が聞こえてきたことと、玄関にある靴からお母さんがいることを理解する。

 脱いだ靴の向きを綺麗に整えてから、自分の部屋に向かおうとすると、リビングダイニングの扉が開いてお母さんがやって来た。


「あら、てれすおかえり」


「……ただいま」


「少し早くない?」


「今日、体育祭だったから」


 わたしがそう言うと、お母さんは「え?」と驚いた声をあげた。それもそのはず、今日体育祭が行われるということを伝えていなかったのだから、当たり前の反応だろう。


「あら、そうだったのね……」


「気にしないで。仕事があったでしょ?」


「ええ、それはそうだけど……ほんとにごめんね」


「ううん。いつものことだから」


 わたしが首を振ると、お母さんはやさしく微笑んで、わたしの髪を軽く撫でる。


「これからすぐ仕事だから、今日も先にご飯食べて寝てて」


「あ、その。ありす……友達に一緒にご飯食べようってさそわれてて」


「そう。迷惑はかけちゃダメよ?」


「うん」


「それじゃ、鍵を閉めたりとかよろしくね。あと、遅くなるまでには帰りなさいよ」


「うん」


 お母さんはわたしがうなずくのを見ると、スリッパから靴に履き替えて、「いってきます」と急いで玄関から出てていった。

 ドアが閉まると、ポツンとわたしだけが残されたようになる。今日は行事だったこともあってか、静まりかえった空間が、やけに寂しいものに感じた。この3LDKは、わたし一人だけには広すぎるのだ。

 

 ……いつまでもここに突っ立っているわけにはいかない。ありすのところに行かなければならないのだ。わたしはお母さんがやって来たリビングダイニングへと向かい、ソファにカバンを置く。それから、とりあえずシャワーを浴びることにした。

 体育祭での汗や砂埃を落として、濡れた髪をバスタオルで拭きながら自分の部屋に行く。そしてドライヤーを取り出して髪を乾かして、ありすの家に行く準備を始めた。


「打ち上げって、何がいるのかしら……?」


 行ったことがないのでわからない。ありすのことだから多少おかしなことでも受け入れてはくれるだろう。それでも迷惑はかけたくない。そう考えながら、クローゼットからネイビーブルーのリュックを取り出す。最近お母さんが買ってきてくれたのだけど、なんとリュックとしてだけでなく、手提げかばんやショルダーバッグにもなるという優れモノだ。外出する機会がなかったから、今日初めて使う。

 他に、携帯やハンカチは絶対必要だ。あとはなんだろう。

 打ち上げという言葉で思い浮かぶのはドラマで見る居酒屋での光景だ。でも、わたしもありすもまだ未成年。お酒は二十歳になってから、だ。

 

きょろきょろと部屋を見渡すが、これといって持っていくべきものは見つからない。ふと、時計を見ると、それなりに時間が経過していた。そろそろ家を出るべき時刻だ。携帯の充電器や筆記用具をリュックに突っ込んで、わたしはありすの家に向かうことにした。


結城天です。こんにちは。

2回目のてれす視点でもお話でした。

てれすの家族が登場するのはたぶん初めてです。

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