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ありすとてれす  作者: 春乃
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67話 体育祭閉幕

 閉会式を終えて、わたしたちは後片付けをしていた。小学生の時からそうだけど、後片付けが終わるまでが体育祭みたいなところはある。競技の後でくたくたに疲れているはずだけど、今も楽しく片付けができているのは、きっとそれだけ充実していたからだと思う。みんなと、てれすに感謝だ。

 みんな体育祭のことを振り返ったり、打ち上げの話をしたりおしゃべりしつつ、テントやイスなどを片付けていく。わたしも今日のことを思い出しながらそうしていると、後ろから声をかけられた。

 

「最上さん」


「あ、山中さん」


「おつかれ」


「うん。おつかれさま」


 山中さんは、わたしが片付けようとしていたパイプ椅子に座る。ここは保護者の方が見るために設置されていた場所で、その椅子をわたしのクラスが担当していた。


「えっと、山中さん……」


「まぁまぁ、少しだけだから。ちょっと話そうよ」


 周りを見ると、ちらほらと山中さんと同じように座って休憩している生徒の姿があった。本当はちゃんと片づけをしないとダメなんだろうけど、みんな疲れもあるだろうし、少しくらいはいいのかもしれない。そう思って、山中さんの隣にわたしも腰を下ろす。


「いやー、それにしても、勝てたのはほんと最上さんのおかげだよ」


「そんなことないって。リレーはギリギリになっちゃったし」


 結果的に勝ったからよかったものの、みんなが頑張って走って貯金をしてくれたのに、それを台無しにするところだった。山中さんは首を横に振って否定する。その表情は明るいものだ。


「それはいいって。勝ったんだし。それよりもね」


「……?」


 山中さんの言葉に首を捻る。他にわたしがクラスのためにできたことなんてあっただろうか。二人三脚ではてれすとぶっちぎりのトップになれたけど、ああいった個人競技の得点は多いものではなかったはずだ。もちろん、そういった点の積み重ねだからバカにはできないけど、それは他の子だって同じはず。

 山中さんは、えへへと少しだけ照れたようにして言った。

 

「最上さんがいなかったら、リレーに参加することもできてなかったと思うから」


「そうかなぁ」


「そうだよ」


 たしかに、てれすと高井さんがけんかしたときはどうなるかと思った。あのまま空中分解しててもおかしくなかったと思う。てれすを連れてこれたのはわたしだからだって思いたい、てれすの一番の友達はわたしだから。

てれすがいなかったらけんかはなかったんだろうけど、そうだったらリレーで勝てていなかった。だから、あのけんかはてれすと高井さんにとってもクラスにとっても良かったんだと思う。

 それをわたしのおかげだなんて、少しくらいは自惚れてもいいのだろうか。そんなことを思っていると、高井さんと赤川さんがやって来た。


「最上さん、山中さん、なに話してるの?」


「リレーができたのは、最上さんのおかげだよって話」


「なにそれ?」


 高井さんがそう言いながら、赤川さんも椅子に座ると、山中さんが説明した。


「高井さんと高千穂さんがけんかしたじゃん?」


「あぁ、そんなこともあったかも……」


 そのときのことを思い出したのか、高井さんは苦笑いを浮かべる。


「最上さんがいなかったら、きっとこのメンバーでリレーに出ることはなかったよねって話してたの」


「まぁ、そうね……」


「高井も高千穂さんも、お互い引かないところがあるからなぁ」


 


 すると、担任の彩香ちゃん先生の声が聞こえた。サボっているのがバレて怒られることを一瞬覚悟したけど、先生の顔はにこやかだった。先生は手に持っていたカメラを掲げる。


「みんなで写真撮りましょ?」


 そういえば、ちょこちょこ生徒会の人や先生たちが写真を撮ってくれていたけど、集合写真みたいなものはまだ撮っていなかった。だからみんなが先生のもとにわいわいと集まる。


「わたしたちも行こう」


 山中さんが立ちあがって、高井さんと赤川さんもそれに続く。


「ほら、最上さんも」


「う、うん」


 山中さんに差し出された手をとって、腰を上げる。三人に囲まれて先生のところに行く途中、ふと思った。

 ……そういえば、てれすは?

 さっきから姿を全然見ていない気がする。辺りを見回しててれすのことを探すと、校舎の影からこちらを覗くようにジト目のてれすと目が合った。椅子の片付けからの帰りに、みんなが集まっていたので、こっちに来にくかったのだろう。

 わたしは走っててれすのもとに行く。


「何してるの?」


「いえ、別に何も」


「写真撮るんだって。てれすも行こ?」


「わたしはいいわ。あんまり好きじゃないし」


 たしか、球技大会の時もそんなことを言っていたような。でも、てれすは間違いなくMVPだろう。リレーでは一番になってリードを広げてくれたし、他の競技でも大活躍だったんだから。

 そうは言っても、無理強いはできない。


「そっか……それなら仕方ないね……」


「……はぁ、わかったわ」


「ほんと!?」


「ええ」


 てれすがうなずいてくれたので、逃げられないように腕をがっちり組んでみんなのところに向かう。と、わたしたちに気づいて山中さんたちが「おーい」と手を振った。


「最上さんと高千穂さんが真ん中ね」


 グイグイ押されるようにして、わたしとてれすは真ん中に寄せられる。すると、てれすが山中さんに抗議した。


「あまり目立ちたくないのだけれど……」


「今更何言ってんの。みんなの前でお姫様抱っこしておいて」


 それを言われてしまってはてれすも何も言い返せない。ため息を吐きながらおとなしくわたしの隣にやって来た。


「いいー? 撮るよー?」


 先生はカメラを三脚にセットして、タイマーを押すと走って列の端っこに並んだ。そしてわたしたちに言う。


「1+1はー?」


直後にフラッシュが光った。



おひさしぶりです。結城天です。

更新がとても遅れてしまって申し訳ありません。

色々思い出しながら読んでいただけると幸いです。

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