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ありすとてれす  作者: 春乃
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66話 リレーの結果

「はい、これでおしまい」


 絆創膏や包帯で手当てを一通りしてもらい、先生は最後に包帯をきゅっと結んでわたしに言う。


「ありがとうごさいます」


「気を付けてね?」


「は、はい……」


 今回はよそ見をしたことが原因だから、それさえなければ転んでいなかった、と思う。痛いし恥ずかしいし、もうごめんだ。てれすにも迷惑をかけちゃったし。


「てれす、ありがとね」


「いえ、このくらいは当然よ」


「ありがと。それじゃ、戻ろっか」


「ええ」


 あらためて保健の先生にお礼を言って、わたしたちは保健室を出ていった。まだ閉会式の途中だろうから、いまから急げば間に合うと思う。


「ありす」


「なーに?」


 グラウンドに向かおうとしたとき、てれすが声をかけてきて首をかしげる。


「お姫様だっこしたほうがいい?」


「なんで!?」


「怪我してるから」


「も、もう大丈夫だよ?」


 まぁ、今はもちろん、来るときも自力で歩くことはできたんだけどね……。わたしが断ると、てれすは少し肩を落とす。


「そう……」


 なんでちょっと寂しそうなんだろう。そんなにてれすはお姫様だっこをするのが好きなのだろうか。だとしても、お姫様だっこで閉会式に参加なんてことになるのはわたしが恥ずかしいから、いまされるのは嫌だなぁ。

 だから、わたしはてれすに言う。


「二人きりのときなら」


「いいの?」


「うん。さすがにこういう人がいるところとかは恥ずかしいから。でも、どうしてそんなにお姫様だっこしたいの?」


 わたしが尋ねると、てれすはほっぺを赤く染めながら、もごもごと小さな声で話す。


「お姫様だっこがいいっていうか、それもいいのだけど」


「だけど?」


「その、ありすと近くにいれたから……」


 あー、たしかにお姫様だっこをしてると体は近くなるもんね。くっついてると、なんかこう、あったかいし。

 でもそれはお姫様だっこに限った話ではないと思う。グラウンドに向かっている途中、わたしはてれすの手を「えいっ」と握った。


「あ、ありす!?」


「さ、いこ?」


 いきなり手を繋がれて、てれすは驚いていたけど構わず閉会式に向かう。

 んー、やっぱりてれすと手を繋ぐとなんだか落ち着くというか、嬉しい気持ちになる。


 グラウンドに戻ってくると、ちょうど賞の発表をしているところだった。どこのクラスかはわからないけど、かなり盛り上がっている。

 わたしとてれすは、自分のクラスの列の一番後ろに並ぼうと、自分のクラスに近づくと、その盛り上がっていたクラスが自分のクラスであることに気がついた。

 状況がわからず、わたしは一番後ろにいた山中やまなかさんに声をかけた。


「山中さん、どうなったの?」


「あ、最上もがみさんと高千穂たかちほさん! 勝ったよ!」


「ほんと!?」


「うん!」


 よく見ると、泣いている子までいた。勝った、ということはクラスリレーはわたしが逃げ切ることに成功していたんだろう。


「よかった……。リレー勝ててたんだ……」


「ビデオ判定で、最上さんのほうがほんの少しだけ早かったんだって」


 興奮気味に話す山中さんの言葉にほっとしていると、「代表者、早く出てきて?」とアナウンスがあった。


「ほら、最上さん」


「え、わたし?」


「うん。いってきて」


「でも……」


 リレーの最後はギリギリになっちゃったし、わたしではなくて他の人がいったほうがいい気がする。そう思って前に出るのを渋っていると、高井たかいさんと赤川あかがわさんがやって来た。


「最上さん、早く」


「そうだよ、はやくはやく」


 二人に言われてうなずいて、てれすのほうを見ると、てれすは優しく微笑んだ。


「ありす、いってらっしゃい」


「……うん、いってくる」


 わたしはみんなのおかげでできた学年優勝の賞状を受け取りに向かった。 

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