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ありすとてれす  作者: 春乃
65/259

65話 激闘のクラスリレー! 後編

「まかせて!」


 てれすからのバトンを、左手でしっかりと受け止めてわたしは走り始める。ふつうに走ったら南山みなやまさんには勝てっこない。でもわたしには、みんなが粘ってくれて、てれすがつくってくれたリードがある。

 

 わたしはバトンを右手に持ち変えて、必死に足を前に進めた。わたしがスタートしてすぐに南山さんが追いかけてきたことは、周りの歓声でわかった。


「南山! いけーッ!」


 走り終わった北川きたがわさんたちが、南山さんに声援を送る。

 なんだかすぐ後ろに南山さんが迫ってきているようで怖くて、後ろを振り返ることはできない。わたしにできることは、とにかく前に進むことだけである。


「ありす! がんばって!」


 いっぱいの歓声と声援のなか、てれすの応援がはっきりと聞こえた。ちらっと声のほうに視線を送ると、てれすだけでなく、山中やまなかさん、赤川あかがわさん、高井たかいさんが一生懸命わたしを応援してくれていた。

 もうこれはがんばるしかないだろう。


 いきなりわたしの足が速くなるということはありえないので、気持ちだけでも負けないように、足を前へ前へと進める。やがて、最後のコーナーを曲がり、ゴールテープが見えてきた。

 それと同時に、南山さんがすぐそこまで迫ってきていることがわかった。

 歯を食いしばって、ラストスパートをかける。


 それでも、ただのクラス委員のわたしとバレー部部長の南山さんでは、距離がどんどん縮まって、南山さんのバトンを持った手が見えた。

 残りの距離は少ないけど、逃げ切れるか……。


 そしてわたしと南山さんは、ほぼ横一線でゴールテープを切った。

 どっちが早くゴールしたのか気になって、審判の先生のほうを向いたけど、それがまずかった。


「あっ……」


足がもつれて、わたしは体勢を崩す。地面がゆっくり、スローモーションのように近づいてくる。

 わたし、コケたんだ……あー、痛いんだろうなぁ……。

 そんなことを察しつつ、ズサァァァと思いっきり転んだ。


「いたた……」


 まさか体育祭で、こんなに派手に転ぶなんて……。いろんなところを擦りむいた気がする。痛い。


「ありす大丈夫!?」


「うん、大丈夫だよ」


 てれすと高井さんたちが慌てて駆け寄ってきたので、わたしは安心させようと起き上がって答える。てれすたちに続いて、先生も慌ててやってきて、わたしに声をかけた。


最上もがみさん、大丈夫?」


「はい、このくらいなら大丈夫で-ー」


 す。と言おうとした瞬間に、わたしの身体がふわっと宙に浮いた。いきなりのことでびっくりしたけど、てれすの顔が近くにあることと抱きかかえられた感覚から、てれすにお姫様だっこされていることを理解する。


「てれす!?」


 わたしの驚く声にてれすはうなずくと、先生に言う。


「ありすを保健室に連れていってきます」 


「そうね。お願い、高千穂さん」


 先生も同意して、てれすは保健室に向かってわたしを抱えたまま急いだ。転んだときよりも目立っている気がするのは気のせいだろうか。


「て、てれす?」


「なに?」


「あの、自分で歩けるよ?」


「大丈夫よ。わたしにまかせて」


 え、えぇ……。でも、てれすがそこまで言うのなら、てれすにまかせよう。

 あれ? そういえば、結果ってどうなったの?


「ねぇ、てれす? わたしたちって勝ったの?」


「さぁ、わからないわ」


「え?」


「先生たちが審議してたみたいだけど」


 わたしとてれすが戻ることにはきっと、結果はもう出ているだろう。ものすごく不安だ。


「……たぶん大丈夫よ」


「ほんと?」


「ええ。ありすのほうが少し早くゴールしたように見えたわ」


「そっか……」


 今はてれすの言葉を信じるしかない。てれすの言ってる通りでありますように、と祈って、わたしは抱きかかえられたまま保健室にやってきた。





 

 

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