64話 激闘のクラスリレー! 前編
二人三脚が終わり、他の競技も次々と行われた。そして残るは最後の競技、クラスリレーだけとなる。わたしたちのクラスのメンバーは、入場門に集合していた。
「いよいよだね、高井」
「……そうね」
さすがにみんな緊張しているみたいだ。
いまのところ、2年生はどのクラスも接戦で、このリレーを勝ったクラスが学年優勝となるだろう。それだけに、わたしたちへの期待はものすごい。
そんななか、山中さんがなにかを思い付いたのか、パチンと手を叩いた。
「あ、そうだ」
「どうしたの、山中さん?」
わたしが尋ねると、山中さんは得意気に、少しだけ悪そうな笑顔をつくって答える。
「もしこのリレーを勝って優勝したら、彩香ちゃん先生にスーパーハーゲンおごってもらわない?」
彩香ちゃん先生とは、わたしたちの担任の先生で、スーパーハーゲンとは少し高いけど、すごくおいしいアイスクリームのことである。つまり、先生のお財布が寂しいことになるのだが、山中の言葉を聞いた高井さんと赤川さんは、にっと微笑む。
「いいわね、それ」
「わたしも賛成!」
わたしだって、リレーは勝ちたいし、アイスクリームも食べたい。でも先生のことを考えると、なんだか複雑な気持ちになる。
「ほ、ほどほどにね?」
「何味にするー?」
聞いちゃいなかった。わたしが苦笑いを浮かべていると、てれすがわたしの手を握ってきた。
「ありす、わたしは一番でありすにバトンを渡すから」
「う、うん」
「がんばりましょう」
「うん!」
そして、グラウンドでは1年生のリレーが終わり、ついにわたしたち2年生の順番となった。
「それじゃ、次2年生。いくよー」
係の先生に言われて、各クラス、走る順番に並ぶ。ということは、わたしの隣は南山さんになる。
「最上さん、お互いがんばろうね」
「うん」
「ま、勝つのはわたしたちだけど」
「わたしたちも負けないよ」
南山さんとそれだけ言葉を交わすと、2年生の入場となる。第一走者はスタートと位置に、他の人はグラウンドの内側に並ぶ。
「北川がんばって!」
「山中さんファイト!」
南山さんとわたしの声援に、北川さんと山中さんがそれぞれ手を上げて応える。
「いちについて、よーい」
パンッ!
北川さんがスタートダッシュをきめて、山中さんもそれに続く。先頭を走っていく北川の後ろを、山中さんはなんとかついていく。そのまま山中は追走し、2位で戻ってきた。バトンが赤川さんに渡される。
そして、赤川さん、高井さんと2位をキープして、次はてれすの番。
「高千穂さん!」
「ええ」
高井さんからのバトンを受け取ったてれすは、ぐんぐん加速していき、一位との差を詰めていく。差はどんどん縮まって、てれすはそのまま追い抜いた。少しずつ差を広げていった。
さっきわたしに言ったとおり、一位でバトンがわたしに渡されそうだ。有言実行っていうのかな、さすがてれす。さすてれだ。
「さすがね、高千穂さん」
隣でてれすの走りを見ていた南山が悔しそうにそうつぶやいた。
なんとかこのリードを守らないと。
やがててれすが戻ってくる。
「ありす、あとはお願い!」
「まかせて!」
パシッとてれすからバトンを受け取って、わたしは走り出した。




