表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありすとてれす  作者: 春乃
63/259

63話 二人三脚

 午後の最初の競技である、部活動対抗リレーを見ながら、わたしたちは入場門の近くにいた。グラウンドでは、陸上部とテニス部が熱戦を繰り広げている。


「うぅ、緊張する……」


「大丈夫よ、ありす」


「てれす……」


 そうだよね。わたしとてれすは息ぴったりだったからきっと大丈夫。練習もやったし。


 周りには、続々と二人三脚に出場する人たちが集まってきていた。とはいっても、まだ全員ではないのか、結ぶためのひもは配られていない。まぁ、ひもを結んで入場するわけではないからいいんだけど。


「あ、高井たかいさんだ」


 グラウンドの部活動対抗リレーは、室外の運動部が終わって、室内の運動部のリレーがスタートしていた。バスケ部の高井さんと、バレー部の南山みなやまさんが走っている。

 このあと文化部のリレーがあって部活動対抗リレーは終わる。そしたら二人三脚だ。

 高井さんのバトンが赤川あかがわさんに渡されたのと同じタイミングで、準備の先生がやって来て、二人三脚の説明を始めた。


「はい、それじゃあひもを配ります。まだ結ばないでね」


 そう先生は言うと、前の方から順番にひもを配る。

 二人三脚は6ペアで直線50メートルくらいを走って順位を決めると言う、とてもわかりやすい競技だ。それだけに、転けちゃったら目立ってしまう。


「はい、最上もがみさん」


「ありがとうございます」


 先生からひもを受けとると、そのひもは練習のときに使っていた、赤いひもだった。なんだか運がいいように感じる。


「もうすぐだから、みんな並んで。まだ来てない人はいないわね?」


 最後の確認をして、先生はぴっと笛を鳴らす。


『続いての競技は、二人三脚です』


「はい、いくよー」


 アナウンスと先生の声で、いよいよ入場となった。先生の案内に、出場する生徒がみんなついていく。

 第一レースの以外の人は、スタート位置のストし後ろで体操座りをしてら自分たちの番を待つ。わたしとてれすは3レース目だから、わりとすぐだ。気持ちの準備をしておかないと。

 わたしが深呼吸をしていると、てれすにちょんちょんと肩をつつかれた。


「ありす」


「どうしたの?」


「あっちにお母さんが」


 てれすに言われた方向を見ると、お母さんが手を振っていた。ではないのか、が教えてくれなかったら、気がついていなかったかもしれない。とりあえず、お母さんに手を振っておく。


「てれす、ありがとね」


「いえ」


「ちょっと緊張が和らいだかも」


 さっきまでは、もし転けちゃったら……なんてことを考えていたけど、もう大丈夫。いつもどおりのてれすを見ていたら、そう思えた。


「次の組」


 先生に呼ばれ、わたしとてれすを含む、第三レースの生徒がスタート位置について、足首にひもを結ぶ。


「がんばろうね」


「ええ」


 てれすがうなずくと、スタート係の先生が、スターターピストルを持つ手を上げて、片耳をふさいだ。


「よーい」


 パンッ! 音と同時に走り始める。


「いっち、に! いっち、に!」


 そんな掛け声をてれすと掛け合いながら、右、左、右、左と順番に足を前に出す。

 おぉ、なんだかすごくスムーズだ。練習のときよりも速い気がする。


 わたしたちはそのまま止まることなく、ゴールテープを切った。後ろを見ると、他のどのペアもまだ途中にいる。つまり、ダントツの一番でゴールした。


「やった! やったよてれす!」


「ええ。よかったわ」


 ひもをほどいて喜ぶ。すると、てれすが右手を少しだけ上に上げて、少し照れながら口を開いた。


「い、いえーい……」


「いえーい!」


 パチーン!

 わたしとてれすのハイタッチの音が、歓声のなかに溶けていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ