59話 ありすの気持ち
てれすと高井さんが無事に仲直りして、クラスリレーの練習は順調に進んでいた。甘いだけでも厳しいだけでもないちょうどいい感じ。雰囲気もよくて、みんなで楽しくやれていた。
とはいえ、競技はこれだけではないので、みんなそれぞれの種目の練習もしておかなければならない。なのでわたしは二人三脚の紐を持って、てれすのもとに向かった。
「てれすー、二人三脚しよー?」
「ええ」
てれすがうなずいてくれたので、わたしたちは走れる場所まで移動する。その移動中、てれすが困った表情を浮かべて口を開いた。
「あ、あの……。ありす……?」
「どうしたの?」
わたしが首をかしげると、てれすは自分の右手を胸の高さまで上げてわたしに見せた。そのてれすの手には、なぜかわたしの左手が繋がっている。
「あれ? いつのまに……」
「気づいていなかったの?」
「う、うん」
てれすに指摘されるまで、まったく気がついていなかったけど、いつのまにかてれすの手を握っていたらしい。
わたしは慌てて手を離す。
「ごめん、てれす」
「いえ、別に大丈夫よ」
……てれすが高井さんをはじめとして他の子ともだんだん仲良くなってきたから、無意識的にやってしまったのかもしれない。
てれすの交友関係が広がることはいいことのはずだし、わたしもそう思っていたはずなのに、子どもみたいだ。まだ子どもだけど。
中間テスト前に、わたしが美月ちゃんと話していたときのてれすも、こんな気持ちだったのだろうか。だとしたら、この気持ちは嫉妬なの……? わたし、高井さんたちに妬いているのかもしれない。
「ありす?」
そんなことを考えていたわたしに、てれすが心配そうにわたしの顔を覗いて声をかける。
「えっ? あ、ごめん。練習しよっか」
「ええ」
てれすに言われてわたしは、てれすの右足首とわたしの左足首を赤い紐できゅっと結ぶ。ほどけないように少し強くしておこう。
「ねぇ、ありす?」
「なーに?」
てれすに名前を呼ばれて顔を上げる。結ばれている分、いつもより距離が近い。
「わたし、二人三脚も勝ちたい」
「う、うん。わたしも」
「あ、そうよね。そうなのだけど、そうじゃなくて……」
てれすはうーん、と考えてから、また口を開く。
「リレーはみんなとだけど、これはありすとだからもっと勝ちたいっていうか……。あっ、もちろんリレーも勝ちたいのよ? でもなんて言えばいいのかしら……」
一生懸命言葉を探す、そんなてれすの姿に、わたしは思わず笑ってしまった。
「がんばろう! ってことだよね?」
「まぁ、そういうことね…………」
そうだよね。今、こうしててれすと一緒にいて、笑ってられてるんだから、それでいいよね。
よし、体育祭がんばるぞ!
「えいえい、おー!」
「おー……………」
わたしの掛け声に、てれすも小さく拳を上げた。




