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ありすとてれす  作者: 春乃
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57話 練習に戻ろう

「それじゃ、戻ろうかてれす?」


 わたしがちょっと勘違いして大騒ぎしちゃったけど、てれすは無事に見つかったので早いとこ高井たかいさんと仲直りしてもらわないと。

 この授業もまだ時間は少し残っているし、早く戻ろうとてれすに促す。

 しかしてれすは首を横にふって口を開いた。


「い、いやなのだけど…………」


「なんで!?」


 まさかそう答えられるとは思ってもいなかったので、わたしは思わず理由を聞いてしまう。するとてれすは、目をそらして少し照れたように頬を染めて返した。


「そ、その……怒ってしまったから………」


「え? けんかしたんだよね?」


 わたしの問いに、てれすはこくんとうなずく。


「だったら怒るのは普通なんじゃないの?」


 怒っちゃったときはつい感情的になって、キツいことを言ってしまうこともある。だから高井さんと顔を合わせにくいというのもわからなくはない。けどそれは、高井さんも同じことのはず。


「それはそうかもしれないけど………」


 てれすはもごもごと答えて続けるものの、ただでさえ大きくなかった声がさらに小さくなってまったく聞き取れない。


「ありすのことで怒ったわけだし………。それをありすに知られるのはすごく恥ずかしい…………」 


「ん、なんて?」


「な、なんでもないわ」


 わたしが尋ねると、てれすは慌てた様子で、ごまかすように胸の前で手をふる。

 なんでもないのかぁ…………。でもわたしはその場にいたわけじゃないからなんとも言えない。てれすは高井さんに、いったいなにを言ったのだろう。てれすがそんなに戻りたくないくらいのことって、ほんとにどんなことを言ったの!? まさか放送できないようなこと………?


 とはいえ、さっき順番も決めたわけだし、今さらクラスリレーのメンバーを代えるというのもあれだ。てれすと高井さんにお互い謝ってもらうのが一番だと思う。


「戻ろうよてれす。わたしも一緒に謝るから」


「で、でも……」


「大丈夫だよ! たぶん」


 わたしがてれすの手をぎゅっと包み込むようにして握ると、てれすはその手を見つめて少しの間悩む。そしてすぐ、決断を下してうなずく。


「そう、ね…………。わかったわ」


「うん、ありがとうてれす!」


「いえ、わたしにも少しくらいは原因があったかもしれないし」


 高井さんだって、ちゃんと仲直りしてくれるはず。雨降って地固まるといいなぁ。

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