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ありすとてれす  作者: 春乃
55/259

55話 ありすの居ぬ間に

 これからバトンパスの練習…………というところで、ちょうどありすが先生に呼ばれてしまった。4人になってしまったけど、それでも練習はできるのでみんなやるだろう。さすがにありすが帰ってくるまで休憩というわけにはいかない。

 ありすがいないのは残念だけど、しかたないので練習しながらありすの帰りを待つとする。


「じゃ、やろっか」


 山中やまなかさん………だったかしら。山中さんの言葉にみんなうなずく。

 いきなり本番と同じで、グラウンド1周するということはせず、まずは短い距離でバトン渡しの確認ということになった。


 全員が同じくらいの間隔で広がる。そして、第一走者の山中さんは合図に手を上げてからスタートした。

 軽めのランニングといった感じで走っていき、バトンが赤川あかがわさんに渡り、高井たかいさんに渡る。

 その高井さんがわたしの近くに段々と迫ってきたタイミングでやや早めにスタートを切る。

 

「…………ッ!」


 高井さんから差し出されたバトンはわたしの左手をかすめて、カラーンと音をたてて地面に落ちてしまった。

 高井さんがその落ちたバトンを拾いながら、わたしに向かって口を開く。


高千穂たかちほさん、ちょっと早くない?」


「そうかしら、あなたが最後スピードを落としたからじゃない?」


 わたしの言葉に高井さんはむっとした表情を見せると、少しだけわたしのほうに詰め寄る。


「はぁ? わたしだけが悪いって言いたいの?」


「………? 違うの?」


 リレーなのだから、少し早めにスタートを切るのはふつうだろう。前の走者を悠長に待っているわけにはいかない。となると、わたしは悪くないはずなのだけど。


「ちょっ、ストップストップ!」


 赤川さんが慌てた様子でわたしと高井の間に入ってきて、山中さんもやってくる。


「落ち着いてよ二人とも。どうしたの?」


「高千穂さんが、バトン落としたのはわたしのせいだって!」


「事実そうじゃない」


 わたしがそうつぶやくと、高井さんは再びわたしをじろっと睨む。

 その様子を見て赤川さんは高井さんをなだめると、赤川さんは続けてわたしに言う。


「高千穂さん。高井も悪かったかもしれないけどさ、高井は左利きだし、ちょっとはくらいはね?」


「? それがどう関係あるの?」


「いや、だから渡すのがちょっと下手でも………」


 わたしが首をかしげると、赤川さんは苦笑を浮かべながらもわたしに説明する。が、その途中で高井さんが赤川さんの腕を掴んで話を止めて首を横に振った。


「もういいわ赤川。高千穂さん、あなた最近最上(もがみ)さんにかまってもらってるからといって調子に乗ってない? どうせこのリレーも最上さんに気に入られたいから出たんでしょ?」


「ちょっ、高井!」


 赤川さんが止めに入るが、なんだろうこの気持ち。

 わたしのことを言われてたさっきまではなかった感情が湧き上がる。わたしだけならどうでもいいと流すつもりだったけど、ありすが出てくるのなら話は変わる。

 ありすのことを言われると、なぜか自分を止めることができなかった。そして自分でもびっくりするほどの声が出る。


「ありすはっ!」


 3人もわたしがこんな反応をすると思っていなかったのだろう、みんな一歩後ずさる。

 

「ありすはそんなことしない! たしかにわたしは調子に乗っていたかもしれないけど、ありすは違う! 関係ない!」


 目を見開いて驚きを隠せない3人の顔を見て、わたしははっと我に返る。

 そのあとは勝手に身体が動いて、校舎のほうに走り出していた。


「高千穂さん!」


 誰かがわたしを呼んだ気がしたけど、そんなことはもうどうでもいい。

 

 ありすが帰ってくるまで練習をして、ありすに褒めてもらおうと思ってたのに………。やってしまった。

 ああ…………やっぱりわたしには、みんなと何かをやるなんてことは、できっこなかったのかもしれない。


 


 

結城天です。こんにちは。

まずは読んでくださった皆様、

ありがとうございます!


今回はありてれで初めてとなる、

てれすsideのお話でした。


これからもありすとてれすを

よろしくお願いします!

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