53話 練習を始めよう
6時間目。みんな体操服に着替えて、練習のためにグラウンドに集まっていた。
球技大会のときもそうだったけど、うちの学校は行事に積極的で、これから体育祭までは授業の時間割りも特別仕様に変更される。普段の勉強は1、2時間目だけとなり、あとはすべて体育祭の練習や会場の準備にあてられる。
準備、といっても実際にやるのは先生や部活動、委員会、生徒会が主なので、クラスだけの人はわりと暇になる。ずっと練習ってわけにもいかないし。でも、わたしはクラス委員の仕事があってそれなりに忙しい。だから練習できるときにしておかないと。
そんなわけでわたしたちは、クラスリレーの5人で集合していた。
「まず、順番を決めよっか」
てれす、高井さん、赤川さん、山中さんがわたしの言葉にうなずく。
「一番速い高千穂さんが、最初に走ったほうがよくない?」
「あー、たしかに。高井の言う通りかも」
高井さんが提案して、それに赤川さんが同調する。2人は同じバスケ部なので仲がいい。そんな2人に言われつつもてれすは首を横にふった。
「………わたしは4番目がいいのだけど」
「あ、そうなんだ」
てれすと高井さんはそんなに仲良くないから、2人の間の空気に微妙なものが流れる。
たしかに一番速いてれすが第一走者になるのが普通だけど、わたしが「わたしの前に走って」とてれすに頼んだのでなんとも言えない。そんな中、テニス部の山中さんが手を上げた。
「わたし一番がいい。きっと北川がくるから」
山中さんのその瞳には燃えたぎるものがあった。きっと同じテニス部で、しかもエースである北川さんには負けられないのだろう。
ならば第一走者は山中さんに任せようと、みんな納得する。
「じゃ、わたしは2番がいいから、高井は3番ね」
「まぁ、いいけど」
こうして、うちのクラスのリレーの順番が決定した。
よし、あとは練習だ。リレーは走るのも大事だけど、バトンパスとかすごく大事だからね!
先生にバトンを借りてこよう。
「じゃあバトン借りてくるね」
たしかバトンとかそういったものは用具係のところにあったはず。
わたしが練習のためにバトンを借りに行こうとしたとき、ちょうど先生に呼ばれてしまった。
「最上さん、ちょっといい?」
「あ、はい!」
とりあえず先生に返事をする。………これはバトンを取りに行けそうにない。
「ごめん、ちょっと行ってくるね」
「いいよいいよ。バトンはわたしが行くから」
「ありがとう山中さん」
山中さんにお礼を言って、わたしは先生のあとについていく。ほんとは練習に参加したいけどしかたない。ささっと終わらせてささっと戻ってこよう。
…………てれすが心配になってちらっと4人のほうを振り返ってみた。うん、すごく心配だ。でも、これを機にみんなと仲良くなってくれたらいいなぁ。
☆ ☆ ☆
先生に頼まれたクラス委員の仕事を終わらせて、わたしは急いでみんなのところに向かう。思ったよりも時間がかかっちゃったなぁ。
そして、みんなが練習しているはずの場所に来たんだけど、てれすを始め誰一人としていない。
「あ、あれ……………?」
うーん、今は休憩の時間なのかなぁ?




