51話 てれすとリレー
「やっぱりてれすはすごいなぁ」
中間テストを無事に乗り切り、学年ごとの順位も貼り出された今日この頃。机を合わせててれすとお昼ご飯を食べながら、朝のことを思い出していた。
わたしがいつも通りに登校すると、ちょうど先生がテストの順位の紙を貼っている途中で、ちらっとそれを覗き込むと1位のところに高千穂てれすの名前があったのだ。さすてれである。
「………そんなこと言って、ありすは2番じゃない」
「いやいや。わたしなんてすごくもなんともないよ。てれすに比べたら雲泥の差、月とスッポンだよ」
実際のところ、てれすには合計得点で20点くらい離されていたから、まだまだだ。もっとがんばらないとなぁ。
「ありすもすごいと思うけれど………。そんなにわたしを褒めてもなにもでないわよ?」
そう言って、てれすは食べようとしていた焼きそばパンとわたしの顔を交互に見比べて、はっとする。
「このパンはあげないわ」
「い、いらないよ、お腹いっぱいだし」
てれすは何を勘違いしたのか、わたしがてれすのパンを欲しているように見えたらしい。そ、そんなにてれすの焼きそばパン見てたかな………。
わたしが誤解だと否定すると、てれすは安心したように焼きそばパンにパクつく。
「あ、そういえばてれす。クラスリレーに出てくれない?」
「…………え?」
もぐもぐも……………と、てれすがパンを食べるのを一旦止める。
うん、わかるよ。てれすが乗り気じゃないってことは感じるけど、てれすには出てもらわないと困る。クラスリレーは競技のなかでも得点が高い。だから、わたしたちのクラスが勝つためにも運動神経のいいてれすにはぜひ走ってもらいたい。
「…………クラスとか、そういうのはちょっと」
「そこをなんとか」
「………うーん」
「よくわかんないけど、わたしがアンカーをやる流れになっちゃってるの………。わたしの前に走って、バトンを渡してくれないかな………?」
そう、なぜかもうすでにわたしがクラスリレーのアンカーをやるという流れにクラスがなっているのである。………ほんとになんでなのだろうか。
すると、てれすは渋々といった表情でうなずいた。
「……………はぁ、わかったわ」
「ほんと!? やったー、てれす大好き!」
ぷいっとてれすが照れたように頬を染めて顔をそらす。
照れてれす。
「でも、わたしがクラスリレー走ってもいいのかしら………。ありすはよくても、他の子は納得しないんじゃない?」
「なんで?」
「だって、わたしはクラスに馴染んでないわ。そんな人がクラスリレーっていう大事な競技に出てもいいものなの?」
てれすが不安そうに話す。が、たぶん大丈夫。クラスの人たちも、てれすは運動神経いいから足も速そうだし、リレー出るでしょ。って思っているはず。
誰が走るの速いとかって、なんとなくわかるからね。
「大丈夫大丈夫。たぶん大丈夫」
「不安しかないのだけれど…………。やっぱりわたしは無難にかけっことかにしておこうかしら…………」
わたしの根拠のない、もはや大丈夫と言っているだけの説得に、てれすはため息混じりで返す。
…………なるほど。てれすはかけっこがしたいと。
「わかったよ。てれすはかけっこも出たいんだね」
「い、いや…………、そういうわけではなくて…………。それだと、なんだかわたしがすっごく体育祭を楽しみにしてる子みたいじゃない…………」
「あ、二人三脚も一緒に出ようよ」
「話を聞いて……………。もう、勝手にして……………」
「わーい」
てれすが呆れるというか、遠くを見るというか、まぁ気のせいかな。
よし、体育祭がんばるぞー! 勝つぞー!




