50話 テストのあとにあるのは
てれすと日本史クイズ大会を今回の範囲の分、一通りやってわたしたちは一息ついていた。
日本史の問題の出し合いっこはほぼノンストップで進んで、すごく効率のいい勉強になったと思う。
「これで日本史はばっちりかも」
「ええ。いつでもばっちこいよ」
初日の日本史と現代文だけでなく、2日目3日目のテストもなぜか自信がある。てれすのおかげかな。
それと、最近はテストの話ばっかりになってたけど、その後に大きなイベントが控えている。きっとてれすは興味ないんだろうなぁ。
「テストが終わったら、すぐ体育祭だね」
「……………………?」
「え、なにその初めて知ったみたいな反応…………。っていうか、去年もあったよね!?」
他の生徒がうきうきわくわくする学校の一大イベントにも、てれすはやっぱり興味関心はないらしい。球技大会のときも、最初はそうだったもんなぁ。
そして、それを肯定するようにてれすの視線がすぅーっとわたしからそれる。
「あ、あった……………かしらね?」
「あったよてれす! 自分を信じて!」
てれすの自信なさげな声にものすごく心配になる。てれすは記憶力いいと思うんだけどなぁ。さすてれなはずなんだけどなぁ…………。
とは言っても、わたしも5月の開催というのはまだ感覚的に違和感は拭えない。近年はわたしたちの高校と同じように、体育祭を5月に行うところも増えてきているらしいけど、体育祭といえば9月ってイメージが強かった。実際、中学校までは9月だったし。
「……………もう体育祭なのね、早いわ」
てれすも体育祭がくるという実感がまだないのか、そうつぶやく。まぁ、もっと近くなったら嫌でも感じることになるだろう。わくわくと一緒に緊張感とかも。
「そうだね………、早いね」
「………ええ。でも、どうして5月なのかしら。普通は秋にやるものじゃない?」
「うーん………………。そうだよね、なんでだろ…………」
5月に行えば、9月よりは暑くないよね。他には、2学期は行事が多いから先生がいろいろ大変とか? あ、逆に1学期は行事が少なくて寂しいから体育祭をもってきたとか?
「……………………」
え、なんかてれすがすっごいわたしを見てるんだけど…………。そんなに変な顔してたのかな…………。
と、急にてれすの整った顔が少し近づいて、そのまま右手がわたしのほうに伸びてきた。
「………!?」
「………………動かないで」
っ!? えっ? ちょっ、なに? てれすどうしたの!?
思わず目を瞑ると、すぐにてれすの指がわたしの髪を撫でる感覚がやってくる。
「……………よし、とれたわ」
「………え?」
「髪に何か付いていたわ。………糸かしら?」
び、びっくりした…………。そういうことか…………。
理解が追い付かないまま目を開けると、てれすが右手を見せてくれてようやくわかった。
「あ、ありがとうてれす」
「いえいえ。……………どうかした?」
「え!? う、ううん、なんでもないよ?」
わたしの反応に、てれすが首をかしげて訊ねてくるけど、こればかりはてれす相手と言えども言えない。
……………まさか、ちゅーされるって思っただなんて、言えるわけがなかった。
「………そう? それならいいのだけど」
「うん、大丈夫大丈夫」
な、なにを考えているんだわたしは……………。
別にてれすとそういうことをしたいわけじゃない…………はずだ。…………いやでも、もしも。もしもだよ? あくまで仮定の話だけど、もしてれすから求められたとしたら、わたしはどうするだろうか。
…………ちょっと想像してみた。
たぶん、いやきっと、わたしはそれを受け入れるのだろう。
結城天です。こんにちは。
まずは読んでくださった方々。
ほんとうにありがとうこざいます!
さて、50話です。ここまで続くとは………。
これも皆様のおかげです。
これからもぜひ、ありすとてれすをお願いします!




