5話 名前で呼び合おう!
はっ……と、目が覚めた。マズイ、寝てしまったみたい……。
目を開けて最初に見えたのは高千穂さんの顔。
肌、白くて柔らかそう……。わたしが見ていたからか、高千穂さんもわたしが目を覚ましたことに気付く。
「おはよ」
「うん、おはよう」
あいさつされて、あいさつしてわたしは異変、違和感を感じた。
高千穂さんと近い。よくよく考えると頭の位置が、体に比べて高いところにある気がする。……つまり、えっと、膝枕?
「う、うわあぁぁぁぁぁッ?! ご、ごめん、高千穂さん!」
わたしは慌てて起き上がる。
話したいなんて言っておいて寝てしまった……。さらに膝枕までしてもらって……。情けない。
「気にしなくていいわ。お代はもう貰ってるから」
「お代?」
どういうことだろう? お金……はあげてない。え、もしかして勝手にとったの? と思い、何も持ってきていないことに気付く。
なら、お代ってなんのことだろう……?
高千穂さんを見ると、うふふと笑っている。
「うすいピンクのふりふり。可愛いのが好きなのね」
自分のスカートを指差して高千穂さんが言う。
うすいピンクでふりふり。そして、可愛い。さらには指差されたスカート。それらから導き出される答え。もうお分かりだろう。
「ええぇぇぇぇぇッ?! ちょっ、なにしてくれてんの?!」
高千穂さんにされたことの恥ずかしさで、わたしはスカートの裾をきゅっと押さえる。……最悪だ。
「いいじゃない、女の子同士なんだし」
「そういう問題じゃないよ?!」
「ごちそうさまでした」
「そういうことでもないよ?!」
なんなの、高千穂さん。そりゃあ寝ちゃったわたしも悪いよ。でも、さすがにこれはないと思う。
わたしが、なんかよくわからないけどモヤモヤとしていると、急に高千穂さんが、あっ、と何かを思い出したように声をあげ、わたしを見る。
「そういえば、あなた名前は?」
「……は?」
「えっ?」
いや、えっ? じゃないよ! えぇ……。
こんなに馴れ馴れしく? 仲良く? して、あんなことまでするくらいだから、わたしの名前ぐらいは知ってると思ってた……。
しかも、同じクラスじゃん……。そうだよ、同じクラスなのに……。
「えっ? って、同じクラスなんだけど。ほんとに知らないの?」
高千穂さんは、困ったようにあごに手を当て考える。
「ええ。同じクラス……。そうだったかもしれないわね」
うわぁ……そこすらあやふやなんだ……。
まぁ、来ないし寝てるし仕方ないのかもしれない。
だから、あらためて自己紹介をすることにした。
「わたしは最上ありす。学級委員もしてる」
「そう」
え? 今、そう、って言ったの? 会話のキャッチボールする気ないの?
このままではいけない。えーっと、仲良くなるにはどうしよう。
……あ、名前で呼び合うとか。うん、それいい。
というわけで、高千穂さんの名前も聞いてみる。
「高千穂さんは、名前なんていうの?」
「てれす。高千穂てれすよ。」
かっ、可愛い。予想以上に丸っこい感じの名前だった。
「へぇ~。じゃあ、てれすって呼んでいい? わたしのことはありすでいいから」
ここぞとばかりにわたしはごり押す。名前で呼び合うって、友達っぽいもんね。
どうだろう。いけたか?
「あなたとは、まだそんな仲じゃないし……」
軽めの否定きました。ま、断られるなんて予想通りだもんね。
てか、人のパンツ見といてそんな仲とかあるの?
まだまだ諦めません。
絶対、名前で呼び合うぞ!
結城天です。こんにちは。
まず、読んでくださった方々ありがとうございます。
やっと、ありすとてれすの要素が出てきました。
ここにきて、二人のフルネームついに公開。
では、次のお話で。