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ありすとてれす  作者: 春乃
45/259

45話 いざ図書室

 キーンコーンカーンコーン。

 チャイムが鳴って、今日の授業の終わりと放課後を知らせる。

 さて、図書室に行かないと。美月ちゃんは、どの教科のどのあたりがわからないのだろう。………わたしのわかるところだったらいいんだけど。


 こうして、図書室へ向かうべくカバンを持って立ち上がったそのとき、制服の裾がくいっと引っ張られた。


「どうしたの?」


 わたしは振り向いて引っ張った犯人のてれすを見る。なにか用事かな?

 てれすは伸ばしていた手をゆっくりとわたしの制服から離した。

 …………なにかを言いたそうではあるけど、目を逸らされてしまった。

 ふむ…………。


「また明日ね、てれす」


 そう言いながら、わたしはてれすを撫でる。

 よしよし。よーしよしよし。


 てれすは顔を赤くしつつも、ちょっとの間わたしにされるがままになる。

 とはいっても、このままなでなでしているわけにもいかない。この後何もないのならずっとなでなでしててもいいんだけど、そろそろ美月ちゃんのところに行かなくては。


「てれす、じゃーね?」


 てれすの頭から手を離すと、なんかすごく見つめられた。

 えぇ………………。

 ど、どうしよう。


 すると、てれすが小さく口を開いた。


「あ、あの………もう少しだけ…………」


「うん」


 よしよし。よーしよしよし。

 わたしが動物研究家になりそうなほどよしよししていると、やがててれすは満足してくれたのか、わたしの手を握ってきた。


 どうやら、やっと図書室に行けそうだ。たぶん美月ちゃんはすでに来ているだろう。

 急がないと。

 …………………。


「て、てれす? 手をはなしてもらわないと………」


 図書室に行こうとしたものの、てれすがわたしの手を握ったまま離してくれないので、わたしは動くことができない。

 わたしが言うとてれすははっとした表情になって、慌てた様子でわたしの手を離した。


「ご、ごめんなさい………」


「ううん、いいよ」


 これでようやく図書室に向かうことができそうだ。

 

「じゃあ、わたしは行くね」


 バイバーイと手を振って教室を出ていくと、手を振り返してくれているてれすの顔に、なんだか心が痛む。

 でもダメ。心を強くもつのよ、ありす!


 こうしてわたしは、美月ちゃんの待つ図書室へと、自分のテスト勉強も兼ねて足早に向かった。

 ………思った以上に時間がかかってしまった。少し走ろう。

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