45話 いざ図書室
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴って、今日の授業の終わりと放課後を知らせる。
さて、図書室に行かないと。美月ちゃんは、どの教科のどのあたりがわからないのだろう。………わたしのわかるところだったらいいんだけど。
こうして、図書室へ向かうべくカバンを持って立ち上がったそのとき、制服の裾がくいっと引っ張られた。
「どうしたの?」
わたしは振り向いて引っ張った犯人のてれすを見る。なにか用事かな?
てれすは伸ばしていた手をゆっくりとわたしの制服から離した。
…………なにかを言いたそうではあるけど、目を逸らされてしまった。
ふむ…………。
「また明日ね、てれす」
そう言いながら、わたしはてれすを撫でる。
よしよし。よーしよしよし。
てれすは顔を赤くしつつも、ちょっとの間わたしにされるがままになる。
とはいっても、このままなでなでしているわけにもいかない。この後何もないのならずっとなでなでしててもいいんだけど、そろそろ美月ちゃんのところに行かなくては。
「てれす、じゃーね?」
てれすの頭から手を離すと、なんかすごく見つめられた。
えぇ………………。
ど、どうしよう。
すると、てれすが小さく口を開いた。
「あ、あの………もう少しだけ…………」
「うん」
よしよし。よーしよしよし。
わたしが動物研究家になりそうなほどよしよししていると、やがててれすは満足してくれたのか、わたしの手を握ってきた。
どうやら、やっと図書室に行けそうだ。たぶん美月ちゃんはすでに来ているだろう。
急がないと。
…………………。
「て、てれす? 手をはなしてもらわないと………」
図書室に行こうとしたものの、てれすがわたしの手を握ったまま離してくれないので、わたしは動くことができない。
わたしが言うとてれすははっとした表情になって、慌てた様子でわたしの手を離した。
「ご、ごめんなさい………」
「ううん、いいよ」
これでようやく図書室に向かうことができそうだ。
「じゃあ、わたしは行くね」
バイバーイと手を振って教室を出ていくと、手を振り返してくれているてれすの顔に、なんだか心が痛む。
でもダメ。心を強くもつのよ、ありす!
こうしてわたしは、美月ちゃんの待つ図書室へと、自分のテスト勉強も兼ねて足早に向かった。
………思った以上に時間がかかってしまった。少し走ろう。




