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ありすとてれす  作者: 春乃
44/259

44話 てれすの気持ち

「………………」


 てれすがパンをかじって、わたしはハンバーグを口にする。………もぐもぐ。そして噛んでいる間、目の前のてれすを見つめる。

 じー……………。


「………………」

 

 わたしの視線に気づいたてれすが目をそらすように、パンを食べる。それを見てわたしはとりからを一口。…………もぐもぐ。咀嚼の間、再びてれすに視線を送る。


 と、そんなわたしに耐えかねたてれすが、きちんとパンを飲み込んでから口を開く。


「な、なにかしら…………?」


 それはこっちが聞きたいんですが………。

 美月みつきちゃんとお話をちょっとしてから席に戻ってくると、てれすがこんな調子であった。

 いったい、あの時間に何があったというんだ…………。


 食べていたパンの消費期限が切れていた? ………いや、それならパンを食べ続けない。

 クラスの子から何か言われた? ………でも最近はちゃんと授業にも出てるし、4月の最初に比べたらいいから、それもないと思う。


 …………え、ほんとに何?


「てれす、どうかしたの………?」


 仕方ないので、てれす本人に聞いてみる。

 いくら考えてもわからないからこれしかない。てれすは気まずそうに言う。


「い、いや、別に何も…………」


 うーん…………。

 これはあれをするしかない。名付けて、ハンバーグ作戦である。………そのままだね。


「てれす、あーん」


 わたしは美味しい美味しいハンバーグを一口分、おはしで掴んでてれすへ向ける。てれすは一瞬なにやら葛藤していたみたいだけど、やがていつものように口を開いて待つ。


「どう? おいしい?」


「ええ、すごく」


 もぐもぐしながらてれすはうなづく。

 それはよかった。

 では本題にいこうか。


「それで、何があったのか教えてほしいな………」


 わたしが訊ねると、てれすは下を向いて小さくつぶやいた。


「…………たから」


「え?」


 あまりに小さすぎて、まったく声が聞き取れず思わず聞き返す。するとてれすは振りきったように、ほっぺを赤らめて言う。


「ありすが、あの子と楽しそうに話してたから…………」


「え……………?」


 えっと、つまりは…………。


「えへへ」


「その顔やめてもらえるかしら………」


 てれすが照れたように、ぷいっと顔をそむける。

 ………思わず頬が緩んでしまった。


 そっかー、そうなのか。いやー、なんだろうね、なんとかニヤニヤをとめないと。


「ご、ごめんてれす」


「……………」


 たぶん、てれすが求めているのは謝罪ではない。ということは、だ。


「明日は一緒に帰ろ?」


 わたしがそう言うと、てれすはやっとわたしの目をいつも通りに見てくれた。


「…………ええ」


 てれすはうなづいて、さらに続ける。


「あの、ありす。………ごめんなさい」


「ん、いいよ」


 これにて一件落着。…………ってはやくお昼ご飯を食べなきゃ。もう時間があまりない。


 ハンバーグ!




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