37話 仲良くってどうするの?
「よし、終わった」
英語の日本語訳の宿題を終え、見直してから顔を上げるとすでに終わっていたらしいてれすと目が合った。
さすがてれすは早い。さすてれである。
「てれす早いね」
「そうでもないわ。それに正解かどうかはわからないし」
てれすが謙遜する。
そうは言っているけど、てれすはさすてれなので、きちんと訳ができているに違いない。
それに、英文から日本語への訳はそんなに難しくないと、わたしは思っている。ニュアンスとかだいたい合っていればいいからね。
「ありす、他に宿題ってある?」
「ない、かな…………」
…………困ったぞ。もうやることがなくなってしまった。
勉強会といっているから、勉強してもいいけど、それだと学校の授業と変わらない。せっかく休みの日に会っているのだから何かしたい。
どうしよう、とわたしが頭を悩ませていると、ふいに扉がトントンとノックされた。
「どうぞー」
わたしの返事で、予想通りお母さんが入ってきた。
その手にはおぼん。おぼんの上には紅茶と思われるティーカップとケーキのセットが。
「ちゃんとやっているのね。あ、てれすちゃん、甘いもの大丈夫?」
机の上に広げられている教科書やノートを見て、お母さんは関心すると、それからてれすに好みを訊ねる。それにてれすは小さくうなずいて返した。
「はい、大丈夫、です。あ、あの、ありがとうございます……」
「いいのいいの。これからもありすと仲良くしてあげてね」
わたしとてれすが机の上を整理すると、空いたところに紅茶とケーキのセットが置かれる。
やったー!
ケーキなんて、誕生日とクリスマスとその他色々な時にしか食べられないからすごく嬉しい。
「それじゃ、ごゆっくり」
それだけ言うと、お母さんは部屋を出ていく。わたしはその背中に感謝の気持ちを抱きつつ見送った。
さ、ケーキ食べよ。
「いただきます」
まずは勉強で乾いた喉を潤すため、紅茶に手を伸ばす。それを口元に近づけた瞬間、ふわっと甘い香りが漂ってきた。
…………アップルティーか。
そんなオシャレなものがこの家にあったのかと驚きつつも一口。
絶妙な甘さに爽やかな酸味、口いっぱいに広がる良い香り。最高である。
ティータイムにアップルティーを優雅に飲む女子高生。うん、洒落てる。
てれすにはこういうの似合うなぁ、なんて思っててれすを見ると、ケーキセットを見つめて、というよりなにか考え事をしているようだった。このままだと、紅茶が冷めてしまう。
「てれす、どうかした?」
わたしが訊ねると、てれすは顔を上げて答える。
「仲良くってどうするのかしら………?」
どうやら、さっきお母さんに言われたことを悩んでいたらしい。
真面目だなぁ。いつも通りでいいと思うけど。
「仲良く、ね……………。えーと、あれ、どうってどうするんだろ………」
言葉にしようとするとなんだか難しい。
体とか心ではわかってるはずなんだけど。
これは、行動で示すしかありませんな。
思案顔のてれすの横に、わたしはささっと移動する。
「てれすー」
それから間髪入れず、名前を呼んで抱きつく。
突然のことに、てれすは驚きを隠せず混乱している様子。
「まぁ、こういうことじゃない?」
これが仲良く、についてのわたしなりの結論である。
てれすも納得してくれたのか、うなずいた。
「なるほど………。あの、ありす? えっとこれはいつまで………」
「あ、ごめんごめん」
てれすに指摘されて、わたしはてれすから離れる。
さぁ、ティー、の続きと行こう。
ケーキケーキ。
結城天です。こんにちは。
読んでくださった皆様、ありがとうございます。
36、37話と更新させていただきました。
ありすの家のお話、もう少し続く予定です。
今後もよろしくお願いします。
ではでは。




