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ありすとてれす  作者: 春乃
33/259

33話 ありすの好みは

 そんなこんなでお昼休み。

 

 これから季節は夏に向かっていく中、ずっと屋上でご飯というのはさすがに暑い。だからそろそろ室内での昼食にするべきだろう。

 前にてれすにも言ったし。


 というわけで、今日からここで食べようとわたしは、てれすに提案する。


「ね、てれす? 今日からお昼、ここで食べない?」


 するとてれすは、前に話していたことをすぐに思い出してくれたのかうなずいた。


「そういえば、そんな話をしていたわね。ええ、そうしましょう」


 そしててれすは、わたしが机の上に出したお弁当箱をちらっと見て立ち上がる。


「わたしはパンを買ってくるわ。先に食べてて」


「わかった、いってらっしゃい」


 てれすが財布を持って教室を出るのを見届けてから、わたしは机上のお弁当に向き直る。

 先に食べててと言われたので、お先にいただくとしよう。

 オープン。

 今日のメインは何といってもこれ、鶏のからあげ。みんな大好きとりからである。


 ちょっぴり残念なのは、お弁当だから冷めてしまっていること。揚げたて熱々が一番美味しい。けど、冷めても美味しい。つまり、とりからは強い。


 では一口。ぱくっ、もぐもぐ…………。

 うん、おいしい。

 ご飯との相性が良いのも素晴らしい。


「美味しい………」


 わたしがとりからの美味しさに浸っていると、購買の袋を提げたてれすが帰ってきた。


「あ、おかえり」


「ええ」


 てれすは短く返して座ると、袋から焼きそばパンを取り出した。

 そして、教室の周りに目をやるとパンを食べることなく、わたしに訊ねる。


「ここの席、使ってもよかったのかしら………?」


 心配そうなてれす。

 ふむふむ。つまり、今日からわたしたちが急にこの席を使い始めたから、前までいた人たちの邪魔になると。


 でも、そこは安心してほしい。

 ちゃんと近くの子に確認とったから。

 わたしだって、他の人の場所を取るなんてことはしたくない。


 で、近くの子に聞いた結果なんだけど、ここは誰も使っていなかった。たぶんだけど、てれすの席を使うのが怖かったというか、遠慮したんだろうなぁ………。


「大丈夫。誰も使ってなかったみたい」


「そう、それならよかった」


 てれすが安心してパンをかじったので、わたしもとりからに戻る。

 うん、やっぱり美味しい。


 と、てれすから視線を感じた。


「ほーひたの? もぐもぐ………」


 食べながらしゃべる少しお行儀の悪いわたしに、てれすはちゃんと飲み込んで口の中を空にしてから言葉を告げる。


「ありすって、そういうの好きよね」


「………………?」


 わたしはもぐもぐしながら首を捻る。

 

「ありす、カレーとかコロッケとか餃子とか好きでしょ?」


 てれすの質問に疑問を抱きながらも、わたしは頭に、その料理たちを思い浮かべる。

 カレー。コロッケ。餃子。

 …………最高ですな。


 そして、今度はしっかり口の中のものを飲み込んでからわたしは答える。


「うん、大好き。………って、なんでわかったの?」


 てれすにわたしの好みを教えたことあったかな……?

 ハンバーグとオムライスなんかは、お昼ご飯のときに言ったかもしれないけど。うーん………。


 てれすは、柔らかい笑みを浮かべながら口を開く。


「なんとなく、かしら」


 えぇ………。

 ただの偶然ってこと? 


 ………でも、自分の好みを知ってもらってるって、なんだか嬉しい。

 わたしも、てれすの好きなもの知りたいな………とここで、大事なことを思い出した。


 アプリのやつ、交換しなきゃ…………。




 



 


 

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