30話 はじめての電話
クラス委員の仕事を終わらせてすぐ、わたしは家に帰った。
そして、いつてれすから電話がかかってきてもいいように自分の部屋で携帯を片手に待つ。が、いっこうにその気配はない。
「あ、あれ…………?」
わたしが間違った電話番号を教えた、ということはない。……と思う。
うーん、てれすもなにかあるのだろう。そうだよね。
そんな風に考えながら待っていたのだけど、ご飯を食べ、お風呂にも入ってしまった。
うーむ。この場合に考えられることは、
1.てれすが単に忘れている。
2.わたしが番号を教え間違えた。
3.もともと、このくらいの時間にかけるつもりだった。
3だった場合、わたしがすごく楽しみにしているみたいだ。いや、実際楽しみなんだけど。
………まぁ、今日かかってこなかったら明日直接すればいいし、宿題でもしながら気楽に待つことにしよう。
教科書とノートを広げペンを持って、いざ取りかかろうとしたとき、携帯から音楽が流れ振動した。
見てみると、知らない番号からの着信である。
おそらくてれすだろう。
「もしもし」
わたしが電話に出ると、聞き覚えのある声が返ってきた。
『あ、ありす? すごい、ほんとに繋がった………』
「そりゃあ繋がるよ。遅かったね」
てれすの反応に苦笑しつつ、もしかしたら今日はかかってこないのではないかと思っていたので、そこを訊ねてみる。
正直、てれすならすぐにかけてくるものだと思っていた。
『ごめんなさい、いろいろあって。今、大丈夫だったかしら?』
「うん、大丈夫。宿題してたとこ」
正確にはまだ広げたばっかりで始めてはいないけど。
ほんとにちょうどのタイミングでてれすは電話をかけてきた。
ま、とにかく繋がってよかった。勉強会のとき、どこかで待ち合わせて、わたしの家でするつもりだったから、連絡できないと不便だもんね。
「これで勉強会もばっちりだね。今来たーどこー? とかできるし」
『そうね。…………あの、それなのだけど。ありすのおうちの方の迷惑とかない………?』
てれすが心配そうに聞いてくる。
うーん、大丈夫って言ってるんだけどなぁ。
実際、うちのお母さんなんて、「てれすちゃんってどんな子なのかしら~」とか言ってたし。
「全然大丈夫だよ。うぇるかむうぇるかむ」
てれすったら心配性なんだから。
まぁ、その気持ちもわからないではないけどね。
『そ、そう、よかった………。た、楽しみにしてるわ…………』
「うん、じゃあ切るね」
てれすも楽しみにしてくれているみたいでちょっぴり嬉しくなる。
でも、宿題をしなきゃいけないし、今回の用件はたぶん済んだので電話を切ろうとすると、向こうでてれすが慌てたように声を発した。
『えっ、もう切ってしまうの………?』
「あ、ごめん、まだなにかあった?」
伝え忘れたことでもあったのだろうか。
そうだったら申し訳ない。
が、てれすはそうでもないらしく、
『いえ、別になんでも…………。あ、そういえば宿題してたのよね、ごめんなさい。がんばってね』
うん、おやすみ。というわたしの返事が聞こえたのかわからないくらいのタイミングでプツッと通話が終わる。
………おかしいなぁ、同じクラスだからてれすにも宿題があるはずなんだけどなぁ。
まるで他人事のようにがんばってね、と言われた。
「ま、てれすだもんね」
そうしてわたしは、口元を少しだけ緩めながら、宿題を始めた。
結城天です。こんにちは。
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