28話 一緒にテスト勉強しない?
わたしのオムライスとてれすのサンドイッチを、それぞれ美味しくいただいて、一息つくと残りの時間はおしゃべりの時間になる。
そりゃね、2人とも花の女子高生だからおしゃべりが趣味みたいなところあるからね!
「てれす、いい天気だよね」
「ええ、そうね」
…………ごめんなさい、全然趣味じゃなかった。
まず、わたしの話のふりが下手。なに、天気って。
そしててれす。会話する気があるのか、微妙だ。
わたしじゃなくて、他の人だったら、もっといい話題があったのだろうか。
わたしは、テレビをそんなに観ない。
かといって、てれすのほうも観なさそうではある。お互い、今やってるお気に入りのドラマとかあれば違ったのかもしれない。
というか、てれすはわたしとお話しがしたいのだろうか。
が、そこを考えると元も子もないので、わたしは共通の話題を探す。
あ、そういえばあったかも。
「そういえばもうすぐ、中間テストだよね」
これだ。
仮にてれすに、ええ、そうね。と返されたとしても、その後もある程度はいける。
学生共通の話題といえばこれ、テストだよ!
「ええ、そうね」
「てれす、勉強してる?」
話を続かせるとかでなく、これは普通に気になる。
今までてれすが真面目に授業を受けていたのを見たことはほとんどない。でも、テストの点は素晴らしい。
だから、家で勉強しているのかもと思い、だとしたらどんな方法でしているのかすごく興味があった。
「……してなくはない、かしら」
やっぱり一応してるにはしてるんだ。
となると、内容が気になる。
あ、そうだ。てれすがよければ、一緒に勉強して、よかったら教えてもらおう。
「てれす、一緒にテスト勉強しない?」
てれすは一瞬考えたけど、すぐにうなずいた。
「いいけど、ありすはわたしと一緒に勉強する必要ある?」
「あるある。じゃ、今週の土曜ね」
「…………わかったわ」
それじゃ場所は、とわたしは考えを巡らせる。
学校も開いてなくはないのだけど、休日にわざわざ来ることはないだろう。
ならば無難に図書館かファミレス、と思ったところでもっといい案が浮かんだ。
「わたしの家でいい?」
我ながらナイスアイディア。
そうわたしは思ったのだけど、てれすには思いもよらぬ提案だったのか、え? と瞬間フリーズした様子。
「えっと、それはありすのおうちということ?」
「うん、そうだよ」
なんだろう、この反応は…………。
もしかして、わたしの家に来てわたしの部屋で勉強するのは嫌なのだろうか。
「てれす? わたしの部屋、そんなに汚くないよ?」
すごくキレイなわけでもないけど、人を呼べるくらいにはしている………はずだ。
……………いや、きっと大丈夫。
なんてわたしが思っているとてれすが手を胸の前で振って訂正する。
「あ、ごめんなさい。そういうわけじゃなくて………。えっと、その………」
てれすが言葉の最後で少し言い淀む。
とりあえず、わたしの部屋に来たくないとかではなさそうなのでほっとする。が、そんなわたしから、てれすは目を逸らすと小さな声で続けた。
「その………、他の人のおうちとか、行ったことがなくて………」
「え、そうだったの!? もしかして、そういうのダメだった?」
てれすのおうちのルールでダメなのなら、わたしが誘っているのは迷惑のほかない。
わたしが反省モードに切り替えようとしていると、そうではないらしく、てれすが首を横に振る。
「いいえ、そういうことはないけれど………。でも、人のおうちに行くのが初めてだから、どうすればいいのかわからなくって…………」
そう言って、てれすは俯く。
………そういうことか。
それなら、簡単なことだね。
「普通でいいよ、普通で。わたしの家だし」
変に気を遣われても、逆に困る。
パンツを見るのはどうかも思うけど、あんな感じのいつも通りのてれすでいい。
「普通…………」
「そ、普通。いつも通りのてれすでいいよ」
てれすにかしこまられると、わたしも恐縮しちゃって、なんだこれ状態になりかねない。
いつものてれすといつもの時間を過ごしたい。
するとてれすは、わたしにしっかりと向き直り、頭を下げた。
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「うーん、それはちょっと違うくない………?」
他の人の前や、家に来たとき母にでもされたら誤解を生んでしまいそうだった。
ま、なにはともあれ約束。
勉強ってことになってるけど、二人ともそんなに心配ではないからちょっとくらいは楽しくしてもいいよね。




