27話 お昼ご飯事情
屋上への扉を開けて外に出ると、いつも通りの開放的で気持ちのいい空間が広がっていた。
「ご飯ご飯~」
わたしたちはこれまたいつも通り、扉の近くの日陰に座る。
よっこらせと座って、いざお弁当というところでてれすがつぶやいた。
「………やっぱり、少し暑くなってきたわね」
「うーん、そうだねぇ」
まだ夏になるのは先の話だけど、季節はそっちに向かっていくわけだから、日に日に暑くはなっていく。
これからは暑さ日差しと厳しくなっていくだろう。
この学校は教室に関してだけなら、クーラー完備なので夏は是非ともクーラーのお世話になりたい。
それに、問題は晴れの日だけではない。
雨の日はいつも屋上に出る扉の内側、つまり外に出ないギリギリの校舎内で食べている。
これの何がつらいって、風が全く吹かないのだ。ものすごく蒸されている感じになる。
わたしはもちろん、てれすも汗だくでお昼ご飯を食べたくはないだろう。
「てれす、そろそろ教室でのお昼を考えない?」
わたしの提案に、てれすは思案顔になる。
………悩むのかぁ。
即答してほしかったけど、そんなに教室が嫌なのだろうか。
「晴れの日は日差しが強いし、雨の日はそこだと風が通らなくて暑いから………」
そこ、とわたしは入り口を指差す。
そのことをイメージしてくれたのか、てれすがようやく決断してくれた、
「………そう、ね。そうしましょう」
てれすが重々しく言う。
うーん、余計だったかなぁ。でも、暑いのは嫌だし………。
「すぐってわけじゃなくて、そのうちでいいから」
「………ええ」
今日はここで食べることが決定済みなので、わたしはお弁当を広げ、てれすもコンビニの袋を探る。
そして、袋からサンドイッチを取り出した。
…………意外だ。
菓子パンばっかり買ってきてるのかと思っていた。
と、わたしの視線に気付いたてれすが、首を傾げる。
「………どうしたの?」
「いや、てれすにしては普通だなって」
わたしの言葉に、てれすはなにやら複雑そうな顔になる。
「え、それわたしバカにされてる? 気のせいよね?」
わわっ………。そう思われたか………。
いや、普通そう思うか。
たしかに今のはわたしが失礼だったかもしれない。
きちんと謝っておこう。
「ごめん、てれす。そんなつもりはなかったんだけど………」
「え、ええ………。そこまでのことじゃないし………」
言っててれすはわたしから目を逸らすとは、サンドイッチを開封した。
わたしも食べようと、小さくいただきますをして、お弁当箱に視線を落とす。
今日はなんと、オムライスなのです。
普段真っ白なお米ゾーンにはチキンライスを包み込む、黄金の卵が存在している。
わたしはそれをスプーンで一口すくうと、てれすを呼ぶ。
「てれす、あーん」
するとてれすは、前には少しあった恥じらいはどこへやら、瞬時に状況を理解するとぱくっと食いついた。
もぐもぐもぐ。
「おいしいわ、ありす」
右手でグッとポーズするてれす。
それはよかった。嬉しい限りです。
では、わたしもいただくとしますか。
ぱくっ、もぐもぐ。
「ほんとだ、おいしい」
なんといっても卵ですな。まろやかな優しい味わいでいい感じだ。
それに、オムライスの何がいいってケチャップで文字を書けることだよね。
お家でオムライスを食べるときは何を書こうか迷うんだよねぇ。
………まぁ、お弁当だと蓋でべちゃってなるからできないのだけど。
若干暑いものの、いつも通りのお昼ご飯。
おいしいお弁当に、隣にはてれす。
それにしても、オムライスっていいよね。




