25話 …………いる?
そんなこんなで4時間目。
席が変わって、てれすと隣になってからの時間で改めてわかったことがあった。
てれす、ほんとに何にもしないんだ………。
1時間目はね、わたしが見すぎだったところもあったし、それでてれすの気を散らしたのかも、なんて思ってたけど、2、3時間目と寝ているかボーッとしているか外を見ているかのどれかだった。
学生としていかがなものだろう………。
なんて心配をしながら横目でちらっとてれすを見る。
………寝ておられた。
前の席でもそうだったとはいえ、いざ隣になると寝ているのが超伝わるというか、超寝てる。
「最上さん、この問題解いてみて?」
「あ、はい」
先生からのご指名を受け、わたしはノート片手に黒板の前へと移動する。
ノートと黒板を見つつ、白チョークで解答を書いていった。そして最後にミスがないことを確認して先生に、どうですか? という視線を向けた。
「うん、正解。さすがね」
よかったぁ………。
ふぅと息を吐きながら、わたしは自分の席に戻る。
こういうとき、先生たちは間違えてもいいから、みたいなことを言うけどこっちはそうはいかない。
恥ずかしいし、その後訂正させられるという処刑に近いことをされちゃうのだから。
と、いつの間にやら起きていたてれすが、手元で何やらガサゴソしていた。
何してるんだろ………?
不審に思いながら席に戻り、座ってから改めててれすを見ると、長方形の銀色の袋が。てれすはそこから1つをつまみ上げるとそのままそれを食べた。
細長い生地にチョコレート。みんな大好きポリッツだった。
授業中にお菓子食べてる!?
わたしからすると考えられない行動に絶句していると、そんなわたしに気づいたてれすがポリッツを1本差し出してきた。
「…………いる?」
「え、いいよいいよ」
本当は欲しい。すごく欲しいけど授業中なので遠慮させてもらう。
………休み時間なら、ありがたくもらうのに。
てれすは差し出していたポリッツをポリポリと食べると袋からもう1本取り出して口に含めた。そして、口にくわえたままわたしに向かう。
「ふぁい(はい)」
どゆこと!?
さっき遠慮したはず、しかもこの様子だとまるでポリッツゲームのよう、というかそのものである。
いやいや。いやいやいや。
ぶんぶんと首を横に振るわたし。
するとポリッツはてれすの口に吸い込まれていった。
なんでちょっと不服そうなの………。
わたしが苦笑していると、
「こらっ、高千穂さん、最上さん!」
すぐ目の前に先生がいた。
あ、これは怒られる。
「授業中にお菓子食べちゃダメでしょ?」
「ご、ごめんなさい………」
反射的にしゅんと謝るわたし。
わたしは食べてないんだけどなぁ…………。
で、怒られている張本人であるはずのてれすは、モグモグしているポリッツをごっくんすると、
「先生もどうぞ」
ポリッツを1本、先生に差し出した。
「ありがとう…………ってそうじゃないでしょ!? もうすぐお昼休みなんだから我慢しなさい」
先生はため息混じりに注意する。
たしかに、先生の言う通り今は4時間目で、あと30分もしないうちにお昼休みになる。
「………はい」
先生の言葉に納得したのか、てれすは袋を箱に戻して、それをカバンにしまう。
てれすがポリッツをカバンにしまったのをしっかりと確認してから先生は教卓に戻っていった。
「はい、それじゃあ授業続けます」
授業が再開されたわけだけど、さっきの先生の言葉から、わたしにはちょっとした疑問が発生していた。
今までのお昼休みは、お昼ご飯をてれすと一緒に屋上で食べていた。でも今は席が隣だから、机を合わせてここで食べることも可能だ。
でもでも、どっちにしてもてれすのパンを購買に買いに行くから教室を離れる。てことは今まで通り屋上なのかも。
………てれすに任せよう。
わたし一人で考えていても結論は出なさそうなので、また睡眠の時間に入ったてれすに、ここは決めてもらおう。
わたしはてれすから視線を戻し、再開された授業に集中することにした。




