22話 栄冠は輝く
すべての競技が終了し、球技大会はこれにておしまい。
これから表彰式ならびに閉会式が行われる。
表彰なんてめったにされることじゃないからものすごく緊張する。決勝戦のときよりも緊張しているかもしれない。
……てれすはきっと、表彰慣れとかしちゃってるんだろうなぁ。
1年生の部から順に表彰され、続いてはわたしたち2年生が表彰される。バスケ、バレーと名前が呼ばれて、いよいよわたしとてれすの番になった。
「2年生テニスの部優勝、最上ありす、高千穂てれすペア」
「はいっ!」
ちょっと震え気味のわたしの声だけが響いた。
えっ、てれす?
わたしは一緒に返事をしてくれなかったてれすを、どうしたんだろうと見る。
と、そのてれすは口を真一文字にきゅっと結んでいた。
えぇ…………。
少しだけ文句を言いたくなったけど、そんな時間はない。わたしたちは校長先生の前に歩いていく。
「おめでとう」
校長先生から賞状を受け取り、お辞儀。
そして、周りから痛いほどの視線を浴びつつもとの場所に戻る。
だが、表彰式は終わらなかった。
3年生の表彰が終わり、
「続いて、ベストチーム賞です。ベストチーム賞、2年生テニスの部、最上ありす、高千穂てれすペア」
えっ!?
なんと思いもしなかったところで再びわたしたちの名前が呼ばれた。
と、いうことは……。
「はいっ!」
またしてもわたしの声だけが響く。
ですよねぇ…………。
てれすはすました顔である。
ベストチーム賞を受け取り戻ってくると、わたしはてれすに訊ねる。
「なんで返事してくれないの? すごく恥ずかしいんだけど……」
「…………いろいろあるのよ、わたしにも。………きっと」
てれすは目を逸らしながら答える。
きっとってなんだろう……。
そんなこんなで閉会式が終わった。
わたしとてれすも教室へ帰ろうとしていると、ふいにカメラを手にした先生に声をかけられた。
「最上さん、高千穂さん、写真いいかしら?」
あ、そうか。優勝したところはみんな写真撮ってるんだっけ。
わたしたちは最後に終わったからまだだった。
「はい、ぜひお願いします!」
「あ、写真とかいいんで」
てれす!?
2人の回答が違ったものだから、先生もどうすればいいのか困っていた。
「てれす、撮ってもらおうよ。せっかくだし」
「あんまり得意じゃないのよ、写真…………」
あ、なんかわかる……。てれすそんな感じするもん……。
でもでもここはぜひ、記念に思い出に一枚欲しい。
と、いうことでわたしはてれすに抱きつく。
「先生、今ですどうぞ!」
わたしの言葉に先生は慌ててカメラを構える。
「ちょっ、ありす!? やめっ、わかった! わかったから! 撮る! 撮ればいいのね!?」
顔を真っ赤にして抵抗するてれす。
もう、撮るならもっと早く言ってよぅ。
では先生。改めてお願いします。
「はーい、撮るよ。はいチーズ」
カシャッ。
ピースピース。いぇい。
……なんかてれすはぎこちない気もしたけど気のせいだろう。
「写真はそのうち渡すね。2人とも、ほんとにおめでとう」
先生が、撮った写真を見せながら言う。
「ありがとうございます。でも、てれすのおかげです。わたし、なんにもしてないですから」
そんなわたしの言葉にてれすは少しむっとした表情を見せた。
「そんなことないわ。栄冠は、わたしたちに輝いたのよ」
「てれす……。ありがと。…………でもそれ、競技違うくない?」
たしか高校野球だったはず。
優勝校さん、ほんとにおめでとうございます!
そんなわたしたちを見ていた先生は笑って、
「さすがベストチームね。あ、そろそろ先生は行くわ」
先生を見送ると、周りに誰もいなくなっていることに気づいた。
そりゃそうか、式が終わればみんな教室に戻るよね。
「帰ろっか?」
「ええ」
教室に帰りながらわたしは、どうしても言っておきたかったことを口にする。
「てれす、ありがとね」
言って恥ずかしくなり、はにかむ。
一方のてれすもいきなりお礼を言われたものだから対応に困る。
「えっ? あ、そうね。ええ…………」
ぎこちないそんな言葉の後に、てれすは頬を染めつつ小さな声で、
「…………わたしのほうこそ、そ、その…。………ありがとう」
こうして、わたしとてれすの初めての共同作業(?)となった球技大会は幕を下ろした。
結城天です。こんにちは。
まず、読んでくださった方々本当に
ありがとうございます。
今回から普通に学校のはずでしたが、
閉会式を忘れていました。
次こそは…………(笑)
では、次のお話で。




