2話 高千穂さんは天才
1時間目が始まる。わたしはとりあえず、高千穂さんを見ることにした。わたしは一番後ろの席なのですごく見やすい。超見える。
授業開始の礼をして、高千穂さんはまず、まっさきに……寝た。
「えぇ…………」
わたしはあっけにとられる。うとうと睡魔と戦うこともなく、がっつり机に頭をつけて寝ている。ガチ寝だ。
これでは見ていてもしょうがない。ため息を吐きつつ、わたしは先生の言葉に耳を傾ける。
「今日はテストを返します」
先生の一言にクラスから軽くブーイングが起こった。
自分で言うのもなんだけど、わたしは勉強ができる方だ。できるというか、一応、毎日ちゃんと予習復習をやっているので、テストの成績は良いほうだと思う。
廊下側の席の子からテストは返却されていって、やがてわたしの番がやってきた。
「最上さん」
「はい」
わたしは少しだけ急ぎ足で先生のところへ向かう。
どれだけできた気がしているテストでも、この瞬間はいつも緊張してしまい、受けとる手が少しだけ震えてしまう。
「今回もよくできていたわよ。あなたにとっては、少し満足いかないと思うけど」
テストを受けとる。
右上に赤色で書かれている点数は、92点。
うーん……。
今見ただけでも、ケアレスミスをいくつか発見してしまった。
帰ってから復習しなきゃ、と一人反省会をしていると、高千穂さんの番になる。が、高千穂さんは名前を呼ばれていることなんか知らんぷりで、すやすや寝ていた。
「高千穂さん、起きなさい。さっさと取りに来て」
何度も呼ぶ先生の声にとってもめんどくさそうに起き上がると、ふらふらとテストを受け取りにいく。
「ん」
テストをよこせと言わんばかりに先生に手を差し出した。
その態度に、先生の眉が寄る。
「高千穂さん、あなたいくら満点だからって、ちゃんとしなさい」
「…………」
高千穂さんは反省した様子を微塵も見せることなく受け取って、自分の席に戻って行く。
……え?
わたしはと言うと、先生の言葉に驚愕して固まっていた。
満……点……? あの寝ていた高千穂さんが?
自分で言うのもなんだけど(二回目)、毎日欠かさず勉強している真面目なわたしが九十二点だったのに、不真面目そうな高千穂さんが満点?
驚きのあまりじっと見ていたものだから、高千穂さんがわたしの視線に気付いた。不思議そうにわたしを見る高千穂さんに、なんでもない、と首を小さく振る。
高千穂さんは、自分の席に戻るとカバンからファイルをとり出し丁寧にテストをしまった。ファイルをカバンに戻すと再び寝る姿勢をとる。
以外と几帳面なんだなぁ、と高千穂さんの新しい一面に思わず口元が緩む。
そんな高千穂さんを見て、先生のため息が聞こえたような気がしたけど、先生はテストを返却し続ける。
その後、普通に授業が行われたんだけど、結局高千穂さんは一度も起きることなくずっと気持ち良さそうにすぅーすぅー寝ていた。
……高千穂さんって、やっぱり不思議な感じだ。
観察をして思ったのは、やっぱり美人であるということ。そしてずっと寝ているということ。
寝ていることに関しては、一時間目から学校に来ている方が珍しいので、今日は真面目な高千穂さんなのかもしれないけど、やっぱり不真面目な印象が強い。
だけどテストは満点で、几帳面な一面もある。不思議だ。
自分でもよくわからないけど、心を惹かれてしまう。話をしたいと思う。
だから一時間目が終わったら話しかけよう。
心の中で、わたしはもう一度決意するのだった。
結城天です。こんにちは。
まず、読んでくださった方々、ありがとうございます。
ありすとてれす2話です。
最上さんは謙虚な子なので、自分からはあまり言いませんがどの教科も、95点くらい取っちゃう子です。
毎日欠かさず予習復習などなど、平日も2~4時間勉強しているのではないかと思います。