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ありすとてれす  作者: 春乃
195/259

195話 遊園地のお土産選び

 一通りのアトラクション(絶叫系を除く)やショー、パークの雰囲気を楽しんだわたしたちは、テーマパークのまとめに取り掛かるべく、お土産屋さんに来ていた。


 集合時間まであと少しということもあって、集合場所となっている入り口の近くにあるお店。とはいえ、だからこそといえばいいのか、このテーマパークの中では一番大きなお土産屋さんのようだった。


 各エリアには、そのエリアのモデルとなっている物語を中心としたグッズやお菓子が多く取り扱われていたけど、ここでは様々な種類のキャラクターがカラフルにお店を活気づけていた。


「さ、てれす。わたしたちも早いところ選ぼっか」


 建物内に入るなり、赤川さんや犬飼さんは忽然と他のお客さんの中に姿を消してしまった。高井さんと猫川さんも二人を追いかけていなくなってしまったので、わたしは苦笑しながら残されたてれすに声をかける。


 しかし、てれすはどこかに気を取られたようだった。

 首をかしげて尋ねる。


「てれす?」


「あ、ごめんなさい」


「ううん。何か欲しいものでもあった?」


「いえ、そういうわけでは……」


「そうなの?」


「ええ。確かにすごいのだけれど、映画とかも見ていなくてよく知らないから、特にほしいものはない、かしらね」


 てれすはもう一度、周りを見てから改めてうなずく。

 

 そういえば、てれすはあんまりこの遊園地のテーマとなっている作品を見たことがないと言っていたのを思い出した。

 たしかにそれなら、あまり目ぼしいものはないかもしれない。

 かく言うわたしも、全部の作品を知っていたり見たりしているわけでなく、有名なキャラクターは普通に好きってほどだけど。


 でも、それだけに誰もが知っているようなキャラクターのお土産も豊富にある。


「家族にお土産とかは買わなくていいの?」


「ええ。母には京都で何か買おうかなって思っているから」


「そっかぁ」


 ということは、適当にぶらぶらと歩いて一目惚れして衝動買いする以外、てれすは手持無沙汰ということか。

 それなら。


「ねぇ、てれす」


「なにかしら」


「よかったら、うちの家族に買うお土産を選ぶのを手伝ってくれない?」


「別に構わないけれど……」


 とてれすは歯切れ悪く言って、続ける。


「わたしでいいの? あ、嫌と言うわけではなくて。ありすのお母さんにはよくしてもらっているし……」


「うん、もちろん。てれすだからお願いしたいの」


「……わかったわ」


「ありがと!」


 てれすが一緒に選んでくれるなら心強い。これだけ選り取り見取りだと、わたしだけではなかなか決められないと思う。

 お礼を言って、わたしたちは早速一緒に物色を始める。


「お菓子がいいかなって思ってるんだけど、種類が多くて……」


「そうね……」


 色々と箱を手に取って、中身はもちろん、内容量やパッケージの可愛さとか順番に見て行く。


「やっぱりチョコはやめておいた方がいいかな?」


「ええ。まだ日中は暑い日が多いし」


「だよねぇ」


 これが2月とかなら話は変わってきたのかもしれないけど、今は9月。もうすぐ10月で秋に突入で少しずつ涼しさを感じてはいるけど、それでもまだ暑い日が続いていた。


 てれすの言葉で、選択肢が一つ減ったので、チョコ以外を探していると、てれすがピンク色の箱を手に取った。


「だからチョコレートよりも、こういったクッキーみたいなもののほうがいいんじゃないかしら」


「あ、それ可愛い」


 てれすが手にしていたのは、白い猫に大きなリボンを付けた老若男女に人気のキャラクターのクッキーだった。

 箱は目立つピンク色でキャラクターの顔が前面に押し出され、ラメ加工が施されている。クッキー自体もそのキャラクターの形をしているらしい。


「それいいかも。ちょっと見ていい?」


「ええ。どうぞ」


「ありがと」


 てれすから箱を受け取って、中身について説明が書かれているシールを読む。

 

 お母さんたちが苦手なものも入っていないオーソドックスなクッキーみたいだし、枚数も問題ない。

 なによりも箱が可愛いし、喜んでもらえそうだ。さすがてれす。さすてれである。

 ふむ。


「これにしようかなぁ」


「え」


「え?」


「それにするの?」


「うん。ダメなの?」


 てれすがいいかもって選んでくれたし、わたしもいいと思ったんだけど……。

 何か気に入らない部分でも、もしくはもっといい商品が見つかったのかも?


「あ、いえ。別にいいのだけど、わたしが選んだものでいいの?」


「いいに決まってるよ。あ! もしかして、クッキーがいいって説明するために適当に選んだとか?」


「いえ、適当ではなくちゃんと選んだわ。こういうのがいいかもって」


「なら決まりだね」


「……ありすがいいのなら」


「いいのいいの。てれす、ありがとね」


「大したことじゃないわ」


 そうは言いつつも、てれすは少しだけ照れてしまったのか俯いて答えた。


 それから、他にもいくつかのお菓子をてれすと一緒に見繕って、お会計を済ませる。

 てれすに本当に何も買わなくてもいいのか、再度確認してからスマホで時間を見ると、もうすぐ集合時間だった。


「てれす、そろそろ行こ? 高井さんたちも買い物はもうすぐ終わるから合流するって」


「わかったわ」


 お店の入り口近くで待ち合わせて、わたしたちは班員全員がいることを確認して、集合場所へと向かった。

 ゲートを通過して外に出なければいけないので、一歩出ればもう中に戻ることはできない。


 ……中に戻っても、もう時間はないんだけど。


 それに、遅れてしまうと先生や他の生徒、バスの運転手さんに迷惑をかけてしまう。

 時刻がまだ夕方ということもあり、夜に行われるパレードを見れなかったことに後ろ髪をひかれながらも、わたしたちは遊園地を後にするのだった。


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