表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありすとてれす  作者: 春乃
19/259

19話 決勝戦前

 決勝戦に挑むべく、お昼ご飯を食べ終えたわたしたちは決戦の会場のコートに向かっていた。


「はぁ……緊張する……」


 会場が近づくにつれ、わたしの心拍数の上がっていた。

 わたしが特別何かをするわけじゃないし、そんな期待もされてはいないとわかってはいるけど、ガッチガチに緊張していた。


 一方のてれすはというと、いつも通りのすました顔だった。さすがてれす。略してさすてれである。


 最上もがみ高千穂たかちほペアにとっててれすは、カレーライスでいうところのカレーとご飯。わたしは福神漬けみたいなもの。

 いつも通りに見えるてれすは、いつも以上に心強かった。


「てれすは緊張とかしないの?」


 会場まで黙って移動するのもなんかあれなので、てれすに話しかける。


「え、緊張? してるわ、たぶん」


「ほんと? 全然見えないなぁ」


 てれすも緊張しているらしい。

 見た感じはまさにいつものてれすなんだけど。

 と、そんなてれすは笑いながら、


「わたしだって人間だもの、緊張くらいするわ」


 そっか、そうだよね。

 てれすも緊張しているのだとわかると、少しだけ気持ちが楽になった気がする。

 そんな様子からわたしの緊張が伝わったのだろう、てれすは言葉を続ける。


「……そんなに緊張しているのなら、それを楽しむくらいでやったら?」


「へ? それってどういう……?」


 緊張を楽しむ……?

 わたしにはいまいちイメージが浮かばない。

 そんなことを考えたこともなかった。


「せっかく緊張しているのだから、楽しまなきゃ損よ。あなたらしくいきなさい」


 てれすはわたしを見て、優しく微笑みかける。


「わたしらしく、か……」


 ……そうだね。ちょっと弱気になっていたかも。

 てれすに決勝戦まで連れてきてもらったんだもん、楽しんでやらなきゃ、てれすにも失礼だよね。


「よぅし! ありがとうてれす」


 なんだか、吹っ切れた気がする。

 楽しむこと。きっと球技大会で一番大切なことだ。てれすはそのことをわたしに教えてくれたんだね。


「勝ち負けよりも、大切なことがあるってことだよね?」


「ええ。そうかもしれない。……でも絶対に負けないわ」


 あ、あれ……?


「たとえ負けても、楽しもう?」


「ええ。そうね。……絶対に負けないけど」


 どうやらてれすの新しい一面を発見したらしい。

 そのことにちょっぴり嬉しくなる。


「てれすって負けず嫌い?」


「そうかしら、わからないわ」


 いや、どう考えても負けず嫌いでしょ。

 そう思って苦笑を浮かべていると、てれすが何かを思い出したように声を上げた。


「そういえば……。手のひらに人と3回書いて飲み込むと、緊張が和らぐと聞いたことがあるわ」


「あ、それわたしも聞いたことある。どうなんだろうね」


 てれすはふむとあごに手を当て、なにやら考えると、


「ちょっとやってみて? 効果があるようなら、次からわたしもやってみることにするから」


「えー、わたしで試すの……。効果あるかなぁ……」


「ま、期待はしないでおくわ」


「そうだね」


 そうは言いつつもわたしはきっちり、手のひらに人と3回書いてから飲み込む。

 てれすとのおしゃべりのおかげで緊張もちょっとは和らいだ。


 もうすぐ。いよいよ。決勝戦が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ