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ありすとてれす  作者: 春乃
180/259

180話 修学旅行前夜

 9月末日。

 いよいよ明日から、修学旅行が始まる。

 夏休みが終わるのもあっという間だったけど、2学期が始まってからもすごく早かった。

 班を決めたり、どこに行こうかみんなで悩むのもすごく楽しかったから、明日からの旅行はもっと楽しくなると思うと変に意識してしまう。関西に初めて行くこと、初めて新幹線に乗ることもあって、すごくわくわくしていた。


 晩ご飯を食べてお風呂に入ったら、荷物をもう一度確認して、今日は明日からに備えて早めに寝よう。せっかくの修学旅行なので、体調不良になるのだけは避けたい。自分も嫌だし、他のみんなにも迷惑をかけてしまう。


 お母さんも意識しているのだろう。ご飯を食べながら、明日からのことについて、口を開いた。


「修学旅行、明日からね」


「うん」


「少しの間寂しくなるわ」


「あ、たしかに。ごめんね」


 言われて気が付いたけど、お母さんはいつもわたしとご飯を食べている。お父さんが早く帰ってこられないからなので、明日からお母さんは一人でご飯を食べることになってしまうのだ。


 なんだか、申し訳ない。

 わたしのしんみりとした雰囲気を感じ取ったのか、お母さんが努めて明るく振舞う。


「冗談よ。気にしないで楽しんできなさい」


「うん。お土産、買ってくるからね」


「それもあんまり気にしなくていいから。あなたが楽しんで帰ってくるのが一番よ」


「うん、ありがと」


 ご飯を食べてから、お風呂に入る。

 ホテルのお風呂はどんな感じなのかなぁ、なんてことを考えながらお風呂から出た。

 髪を乾かして自分の部屋へ行こうとしたら、リビングでテレビを見ていたお母さんに声をかけられる。


「荷物の確認が済んだら、今日は早く寝なさいよ」


「わかってるって。小学生じゃないんだから」


「それもそうね」


 苦笑するお母さんとわかれて、二階へ上がる。

 買ってもらった白色の可愛いデザインをしたキャリーバッグの中身を一度すべて出して、中身を確認する。


「えっと、着替えとパジャマ。ハンカチとかティッシュもある」


 綺麗にたたみ直して、順番に詰め直していく。日帰りとか一泊だったらもっと少ないんだろうけど、やっぱり衣類が場所をとりそうだ。


「タオル、歯ブラシ、洗面用具……」


 歩き回るときは、紺色のリュックサックで移動をするつもりなので、ここに入れるのはホテルで必要なものになる。

 他にキャリーバッグに必要なものを修学旅行のしおりや、スマホで「修学旅行に必須アイテム!」というホームページを見ながら、準備を進めていく。

 スマホをスクロールしていると、重大な忘れ物に気が付いた。


「あ! スマホの充電器忘れてた!」


 危ない危ない。

 たぶん、忘れても誰かが貸してくれるとは思うけど、スマホの充電がなくなったら結構ヤバい。思い出せてよかった、と安堵の息を吐く。


 キャリーバッグに入れるものはたぶん大丈夫なので、続いてリュックに入れて持ち運ぶものの確認に移ることにした。


 修学旅行のしおりを見ながら、リュックの中に入れていく。


「生徒手帳、ハンカチとティッシュもいるよね。あとは筆記用具も」


 ハンカチやティッシュはすぐに取り出せるように、一番容量が大きなところではなく、再度の小さなところに入れる。

 

「お財布はすごい大事。酔い止めも、一応いるよね」


 基本的にわたしが乗り物酔いしないんだけど、もしかしたら乗り物が苦手な人がいるかもしれない。修学旅行という少し特別な環境なので、本来酔わない人が酔っちゃう可能性もある。


「折りたたみ傘、いるかなぁ」


 天気予報を見たときは、わたしたちが関西にいる間はずっと晴れと示されていた。

 いらないかもしれない、と一瞬思ったけど、やっぱり必要だと判断してリュックに詰め込む。

 

 もしものことがあるかもしれない。それに、前にてれすが雨に濡れて風邪をひいてしまったことがあったし、持っていこう。

 それから準備を丁寧に進めていって、最後にしおりを入れて、準備完了となる。


「よし、これでおっけー」


 のはず。

 もしも忘れているものがあったら、みんなに借りるとかして乗り切ることにする。


「てれす、大丈夫かな」


 連絡してみようか、とスマホを手に取る。

 MINEを起動しようとしたけど、やっぱりやめた。


「もう寝てるかもだよね」


 それで起こしてしまうのは、申し訳ない。

 楽しい修学旅行だから、寝不足はよくない。

 

 ……わたしも寝よう。


 心配や不安はあるけれど、きっと大丈夫。

 わたしは忘れ物ないと思うし、何かあってもみんなでフォローすれば問題ないのだ。


 悪いときのことを考えるより良いことを考えようと、明日からの楽しい修学旅行に想いを馳せる。

 明日はまず学校に集合して、バスで新幹線のある駅へ行く。そして、いよいよ関西へ。


スマホのアラームをかけて、わたしはベッドに入るのだった。


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