179話 京都自由行動の予定
てれすと図書館で京都の自由行動について調べてから数日後。
日に日に修学旅行が近づいてきて、2年生は意識せずにはいられない。わくわくとした雰囲気が教室中から漂っているのがわかった。
そして今日は、学校でも自由行動について、班ごとに話し合う時間が設けられた。例外的に5時間目と6時間目にパソコン室を使って、調べられることになった。
パソコン室に移動したわたしたちに、担任の彩香ちゃん先生が言う。
「今から班ごとに決めてもらいますが、時間に気を付けてください。できるだけ、余裕を持ったスケジューリングをするようにね」
それから、先生はこの前に配られた修学旅行の栞を手に取って、注意を続ける。
「もう読んでもらっていると思うけど、ホテルの場所も考えて予定してください。それから、みんなで行く場所もあるから、もう一度しっかり読んで、班の皆で話し合ってください」
はーい、とみんなが返事をして、さっそく話し合いが行われる。
わたしたち6人も近くに集まって、話し始めた。とはいっても、グループで少し話をしていたので、たぶん他の班よりは早めに決まると思う。
まずは先生が言っていたことの確認から始める。
「えっと、ホテルは確か、北野天満宮の近くだったよね?」
「ええ、そう書いてあったわ」
てれすが首肯し、他の皆もうなずく。
北野天満宮と仁和寺は、みんなで行くことになっていたので、他の場所で決めることになる。となると、皆が行きたい場所をリストアップして場所を確認、それから場所的に行けるかどうかを調べて、順番の決定、となりそうだ。
「みんな、どこに行きたいんだっけ?」
わたしの問いに、まずは赤川さんが「はいはーい!」と挙手する。
「金閣寺は外せないよね! ね、高井」
「まぁ、たしかに。あとはやっぱり、清水寺も」
「間違いないね!」
高井さんに同意して、赤川さんが「うんうん」と首を縦に振る。犬飼さんと猫川さんもこれには異論はない。
図書館に行った日の夜、みんながグループに参加してから、わたしとてれすが清水寺に行きたいと伝えたら、満場一致で決まったのだ。やっぱりみんな、有名なところには行っておきたいらしい。
次いで、犬飼さんが意見を述べる。
「あたしとねこっちはね、伏見稲荷大社に行きたい!」
「……うん」
元気よく告げた犬飼さんに、猫川さんが遠慮気味にうなずいた。
伏見稲井大社もいいかも、なんて思っていると、赤川さんが首をかしげた。
「伏見稲荷?」
「そうそう、なんと鳥居が千本もあるんだよ!」
「千本も!?」
「ね、ねこっち!」
「うん。あとは、狐とか……」
犬飼さんと猫川さんの説明に、赤川さんは「へぇ!」と目を輝かせていた。さらに高井さんがパソコンで伏見稲荷大社について調べた画面を見せると、「おぉ!」と歓声を上げる。
「いいね! 行こう行こう」
盛り上がっている4人を他所に、てれすがわたしにだけ聞こえるくらい声を潜めて、耳打ちして来る。
「ありす」
「どうしたの?」
「あの、伏見稲荷大社って、ちょっと遠かったような気がするのだけど」
「え、そうだった?」
たしかに図書館で調べてた時にも伏見稲荷大社について書かれていた記事はあった。場所についてわたしはあんまり覚えていないけど、てれすはしっかり覚えていたのかもしれない。さすてれだ。
でも、てれすの言う通りだったとしても、少しくらいなら問題ないだろう。それに、こんなに盛り上がっているみんなに水を差したくはない。
「ちょっとくらいなら大丈夫だよ」
「……そうね」
「てれすは行きたくないの?」
「いえ、そんなことはないわ。鳥居も見たいし、狐も可愛いと思うから、ありすと一緒にわたしも行きたい」
でも、とてれすが言葉を続けた。
「先生が言っていたように、時間は大丈夫なのかしら」
「たしかに、それはそうだね……」
「それに、お昼ご飯を忘れていないかしら?」
「……あ」
すっかり忘れていた。
午前から始まって夕方に集合するのだから、そりゃあお昼ご飯を途中で食べなければいけないだろう。
パソコンの画面を見てはしゃいでいる4人に言う。
「みんな、お昼ご飯どうしようか」
「あ、そうだね。高井は?」
「うーん、特にはないかも。でも、ハンバーガーとかよりは他の物を食べたい」
「あたしも! 京都を感じられるものがいいな!」
「……でも、そういうのって高そう、かも」
……。
お昼ご飯についてはすっかり見落としていたので、パソコンで調べてみたけど、そう簡単には決まらなかった。とりあえず、どこで何を食べるのかは後で決めるとして、お昼ご飯を食べることも考慮して予定を組み立てることにする。
それから、みんなの意見を取り入れて予定を組んだところ、こうなった。
「えーっと。まずホテルを出てから伏見稲井大社に行って、清水寺。それから金閣寺。どこかでお昼ご飯も食べる。これは、全国にあるチェーン店以外で。それで、時間がありそうなら、京都タワーとかに行く……って感じだけど、どうかな?」
予定を書いた紙をじっと眺めていた5人に尋ねると、みんなが一斉に顔を上げて「うん」とうなずいた。赤川さんがてれすに尋ねる。
「副班長は?」
「あ、わたし?」
「他にいないよ~」
「そ、そうね」
未だにてれすは、自分が副班長であることに慣れていないらしい。そんなてれすに可愛いなぁと思っていると、
「ええ、問題ないと思うわ。時間にも余裕があると思うし、観光もお土産も大丈夫だと思う」
てれすがあごに手を添えて言って、わたしたちの班の自由行動は決定となった。あとは、当日の天気や交通状況などを祈るばかりである。
先生に提出してチェックを受けて、無事おっけーをもらって、わたしはてれすの隣に戻っった。
「いやぁ、本当にもうすぐだね、てれす」
「ええ」
「すっごく楽しみ」
「……わたしも」
てれすと遠出したのはたぶん、夏祭りのときとかショッピングモールとかなので、今回はすごく心が弾んでいた。
「てれす」
「なにかしら」
「いっぱい思い出作ろうね」
「ええ」
柔らかな笑みを浮かべるてれすに、わたしも「えへへ」と笑い返すのだった。
結城天です。こんにちは。
ありすとてれすを読んでいただき、本当にありがとうございます!
あとがきを書くの、なんだかひさしぶりな気がします。
お待たせしました。
次回から修学旅行編となります。
よろしくお願いします!




