17話 先が思いやられるなぁ……
コートの中ならどこに返してもいい、てれすにそう言われていたけどさすがにやりすぎた。
いや、別に狙ってやったわけではないけど、前後左右に走らせ過ぎた。
てれすが怒るのも無理のないことだ。
「ご、ごめん、てれす……。わざとじゃないの……。」
わたしは弱々しくも弁明を続ける。
目線がどんどん下がっていく。
「でもわたし、下手くそだから……。そのごめん……」
力なく笑う。
もっと、もっとわたしが上手だったら。
と、てれすも言いすぎたと感じたのか、それともこの空気に耐えられなくなったのか、いずれにせよ慌てた様子を見せる。
「ち、違うわ。その、下手とかそういうんじゃなくて……」
手をあわあわさせていたてれすだけど、ふぅと息をはくと胸元に手をあて、真っ直ぐにわたしを見る。
「ごめんなさい、ちょっと言いすぎたわ。さっきのでいいの、全部わたしが返すから」
そんなてれすから壮絶な覚悟が感じてとれる。
さっきはあんなに疲れていたのに本気なのだろうか。
でも、そのてれすが言うのだ、信じることにする。
「うん、わかった。わたし、がんばるよ」
☆ ☆ ☆
数分後。
そうは言ったものの、わたしがすぐに上手くなるはずなく、てれすの体力も無限ではない。
テニスコートには、力尽きて横たわるてれすの姿があった。
何度かラリーを続け、今回もてれすをめちゃくちゃ走らせた。
そしてわたしがホームランを打つと同時にてれすのスタミナも底をつき、ピクリとも動かなくなってしまった。
わたしは大急ぎでアクエットを買ってきて、てれすに駆け寄る。
「て、てれす、大丈夫……じゃないよね」
とりあえず買ってきたアクエットを差し出す。
するとてれすの手がアクエット…………ではなくわたしのスカートに伸びてきた。
「きゃあ!? ちょっ、てれす!?」
わたしはその手を振りほどこうと、格闘を始める。
なんでそんなに力強いの!?
「パンツ見せなさい!」
「嫌だよ!?」
どうやら頭がおかしくなってしまったらしい。
……元からな気がしなくもないけど。
なおもてれすは諦めてくれない。
「いいじゃない、どうせ見られてもいいのはいてるんでしょ? ありパン!」
「そういう問題じゃないよ!? あと、変な略し方しないで!?」
くっ、超元気じゃないか……。
さっきまでテニスコートで広くテニスをしていたというのに、今はそのテニスコートの一ヶ所でなんとも地味な争いをしている。
なんとかラリーはできるくらいにはなったけど、まだまだだ。
こんな感じで大丈夫なのだろうか。
…………先が思いやられるなぁ。




