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ありすとてれす  作者: 春乃
17/259

17話 先が思いやられるなぁ……

 コートの中ならどこに返してもいい、てれすにそう言われていたけどさすがにやりすぎた。

 いや、別に狙ってやったわけではないけど、前後左右に走らせ過ぎた。

 てれすが怒るのも無理のないことだ。


「ご、ごめん、てれす……。わざとじゃないの……。」


 わたしは弱々しくも弁明を続ける。

 目線がどんどん下がっていく。


「でもわたし、下手くそだから……。そのごめん……」


 力なく笑う。

 もっと、もっとわたしが上手だったら。

 と、てれすも言いすぎたと感じたのか、それともこの空気に耐えられなくなったのか、いずれにせよ慌てた様子を見せる。


「ち、違うわ。その、下手とかそういうんじゃなくて……」


 手をあわあわさせていたてれすだけど、ふぅと息をはくと胸元に手をあて、真っ直ぐにわたしを見る。


「ごめんなさい、ちょっと言いすぎたわ。さっきのでいいの、全部わたしが返すから」


 そんなてれすから壮絶な覚悟が感じてとれる。

 さっきはあんなに疲れていたのに本気なのだろうか。

 でも、そのてれすが言うのだ、信じることにする。


「うん、わかった。わたし、がんばるよ」



 ☆ ☆ ☆



 数分後。


 そうは言ったものの、わたしがすぐに上手くなるはずなく、てれすの体力も無限ではない。

 テニスコートには、力尽きて横たわるてれすの姿があった。


 何度かラリーを続け、今回もてれすをめちゃくちゃ走らせた。

 そしてわたしがホームランを打つと同時にてれすのスタミナも底をつき、ピクリとも動かなくなってしまった。


 わたしは大急ぎでアクエットを買ってきて、てれすに駆け寄る。


「て、てれす、大丈夫……じゃないよね」


 とりあえず買ってきたアクエットを差し出す。


 するとてれすの手がアクエット…………ではなくわたしのスカートに伸びてきた。


「きゃあ!? ちょっ、てれす!?」


 わたしはその手を振りほどこうと、格闘を始める。

 なんでそんなに力強いの!?


「パンツ見せなさい!」


「嫌だよ!?」


 どうやら頭がおかしくなってしまったらしい。

 ……元からな気がしなくもないけど。


 なおもてれすは諦めてくれない。


「いいじゃない、どうせ見られてもいいのはいてるんでしょ? ありパン!」


「そういう問題じゃないよ!? あと、変な略し方しないで!?」


 くっ、超元気じゃないか……。


 さっきまでテニスコートで広くテニスをしていたというのに、今はそのテニスコートの一ヶ所でなんとも地味な争いをしている。

 なんとかラリーはできるくらいにはなったけど、まだまだだ。

 こんな感じで大丈夫なのだろうか。


 …………先が思いやられるなぁ。






 



 


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