16話 ラリーリベンジ
あの屈辱から数十分。わたしはこの地へ再び戻ってきた。
「よし、てれす。早速やろう」
さきほどと同じように、てれすはわたしの対角線上へ移動する。
そして、いいよー、と軽く手を振ってわたしに合図を送ってきた。
よし……。
力を入れすぎない。ボールをよく見る。
てれすから教えてもらったことをもう一度確認してから、わたしは手からボールを放し、ラケットをスイングする。
「えいっ」
ポン、と手には確かな感触。初めての感覚ではあるけども、間違いなく当たった。
そのボールは、ポーン、と大きな軌道を描いて、てれすへまっすぐに向かっている。
てれすは、わたしが打てたことを確認すると、ざっ、すっ、パン! と素人目に見ても綺麗なフォームからわたしが打ちやすそうな優しいボールを返してくれた。
しかも、わたしはほとんど動かなくてもおーけーな場所に。
向かってくるボールをしっかりと見ながら、てれすから教わったコツを思い出す。
打ち返すときは、ターン、ターン、タタ、タン、のリズムと言っていた。
その言葉にしたがって、ボールのバウンドを合わせて、そのリズムでラケットを振る。
ほぼ、イメージ通りに振れた!
が、ボールはボコッ、と変な音をたて、わたしが狙ったところとは全く違う場所に飛んでいく。
幸いなことに、なんとかコートには入りそうだ。
てれすは、たたっ、とボールに追い付くと、さっきと同じような優しいボールをわたしに返してくれる。
今度こそ、てれすのところに……。
そんなことを考え、返ってきたボールを打ち返す。
しかし、打ったボールの方向は悪くなかったものの、ネットに引っ掻けてしまった。
う、うーん……。
難しい……。
一つのことができても、他のことができない。
やっぱり、そう簡単ではないなぁ。
わたしは、引っ掻けてしまったボールを拾いにネットへ向かう。
すると、近づく足音が。
「あ、てれす。ごめん、引っ掻けちゃって」
「大丈夫よ、気にしないで。ラリーができて楽しいわ」
うふふ、と楽しそうに笑うてれす。
そしてコートを指差す。
「あなたはとにかく、コートの中に返すことをがんばって。全部わたしが打ち返すから」
「うん、わかった」
なんて頼もしいのだろう。
わたしは、とにかく返せばいいらしい。
うん、それなら簡単だ。
「いくよー!」
ラリー再開。
まずは、わたしの打ったボールがポーン、とてれすへ飛んでいく。
よし、まずまず狙ったところにいったぞ。
それをてれすが打ち返す。
「よっ」
ポコッ。わたしの打ったボールは前の方へ。
当たり損ねてしまった。
それをてれすが打ち返す。
「えいっ」
ポコッ。お次は力が入ってしまい右の後ろの方へ。
前の方にいたてれすは、今度は後ろに走って、そのボールを打ち返す。
「とうっ」
パン! といい感触。
あ、でも思った以上に軌道が低い……。
それをてれすは、手を伸ばしてギリギリで打ち返す。
そんな感じで何度か繰り返していると、
「ありゃ」
カツン。
ラケットのあみあみでないところに当たってしまった。
フレーム部分に当たったボールはとんでもない方向へ飛んでいく。
完璧なホームランである。
さすがのてれすもホームランは諦めた。
そして、肩で息をしながらわたしのもとへやってくる。
………本気でしんどそうだ。
「はぁ……はぁ……。ね、ねぇ、わざとなの!?」




