152話 夏休み中盤
夏休みも8月に入って一週間ほどが経った。
宿題も、てれすと一緒に勉強することを考えて、いつもよりは遅いペースだけど、問題なく進んでいた。
「あ、そうそう、ありす」
「どうしたの?」
晩ご飯を食べていると、目の前の席に座っているお母さんが、話を切り出す。お茶を一口飲んでから、内容を話し始めた。
「お盆辺りの予定空けておいてね。おばあちゃん家行くから」
「あぁ、そっか。そうだね」
うちでは毎年、お盆にお母さんの実家に帰省するのが通例となっている。
この辺りと比べれば田舎なんだけど、空気は綺麗だし、緑が気持ちいいし、花火大会も開かれるし、すごく楽しみだ。
「今年はどのくらいいるつもりなの?」
「んー、特には決めてないかな」
お味噌汁を飲みながら、お母さんが答える。
今までの経験で行くと、3日から10日。ちなみに去年は一週間の滞在だった。
去年までだったら、特に夏休みに予定が入っているってことがなかったから、どれだけ適当な滞在になってもよかったのだけど、今年は違う。
高井さんと赤川さんにさそわれているカラオケの日程がまだ決まっていないから、あまり長い期間になると、もしものとき困ってしまう。
さすがにお盆の周辺で行うとは考えにくいけど、10日も滞在していると、2人の部活の日程によっては開催されそうだ。
そんなことを胸中で考えていたから顔に出たのか、お母さんが首をかしげた。
「なにかあるの?」
「うん。でも、一週間くらいなら大丈夫」
「そう? それなら、今年は一週間にしましょうか。あとで連絡しとかなきゃ」
その後、夕飯を食べて、お風呂に入る。
今日は毎週楽しみにしているクイズ番組があったのを、テレビをつけて思い出した。そういえば、日曜日にやっていたのが、今週から水曜日に変更されたんだった。
そのクイズ番組を最後まで見て、わたしは自分の部屋に移動する。と、スマホに着信があった。MINEを起動すると、高井さんからメッセージが送られてきている。
『最上さん、カラオケのことなんだけど、20日前後でどうかな? この日がいいって日ある?』
20日前後、か。ふむ、と思案を巡らせる。
おばあちゃん家に行くのはお盆の少し前からになる。ということは、ちょうどこっちに帰って来るくらいだ。
10日間にならないうちに、お母さんに一週間にしてって言ってよかったぁ、と思いながら、わたしは返事をする。
『20日でいいよ。高井さんたちの予定に合わせる』
『それじゃ、20日でいい?』
『おっけー』
可愛いと思って最近買った、犬のスタンプを送る。
『連絡が遅くなってごめんね!』
『気にしないで。部活が忙しかったんでしょ?』
『うん。この前も合宿に行ったの!』
『合宿! 楽しそうだけど、大変そう……』
『あはは、まぁね。それで、わたしたちの宿題が心配だからって、先生が20日前後にお休みをくれたの』
『え! それなら、宿題をしたほうがいいんじゃ……。ちゃんとやってる?』
高井さんからは、パンダが目を逸らしながら口笛を吹いているスタンプが送られてきた。
どうやら、宿題の進捗はよくないらしい。
『と、とにかく20日ってことで。高千穂さんにも伝えといてね』
『わかった。部活と宿題がんばってね』
『……はい』
パンダがしょんぼりしているスタンプが送信された。だから、犬が「ファイト!」と応援しているスタンプを返しておく。
「さ、てれすに伝えなきゃ」
わたしは高井さんとのトーク画面から、てれすとのトーク画面に切り替えた。




