150話 嘘、吐いたの……?
今回もてれす視点のお話です。
ありすの誕生日プレゼント(ありすの誕生日は10月)のリサーチをするため、わたしは一人ショッピングモールへとやって来た。
ありすと一緒に来た時も一緒に見た案内図を見て、わたしは頭を悩ませる。
「さて、どうしようかしら」
人にプレゼントを渡すなんて経験がまったくないから、何をプレゼントしたらいいのかわからない。想像もつかない。
あまり高価なものを渡しても、ありすは喜んでくれない気がする。逆に受け取ってもらえないだろう。それは嫌だ。ちゃんと受け取ってもらいたい。となると、やはり実用性があるもの?
実用性のあるもの、か……。
再び思案を巡らせる。
ありすは何をプレゼントしたら喜んでくれるだろうか。
「あ、そうだ」
1つ、いいことを思いついた。
渡すものごとに、ありすの反応を想像してみることにした。一番喜んでくれそうなものを渡すことにしよう。
しかし。
「……やっぱりダメだわ」
3品ほどイメージしたところで、わたしは首を横に振る。
思いついた時は名案だと思ったけど、この作戦が間違いなく失敗だったからだ。
なぜならば、わたしの中にいる最上ありすは、わたしが何を渡してもすごく喜んでくれたから。何を渡しても同じような反応になりそうだった。
思い上がりかもしれないけど、適当に買った赤ペンとか、購買のパンを渡しても、感激してくれそうな気がする。「てれすー!」って言って、抱きついてきそうだ。
けど、それではダメだ。ちゃんと真剣に選んで、ありすに喜んでほしい。
どうしようかと悩んで、わたしはヘアゴムに触れる。
ありすがくれたこのプレゼントはすごく素敵で嬉しかった。わたしはありすに好みを言ったことはなかったと思うけど、ありすはどうやってこのヘアゴムを選んでくれたのだろう。
ありすにプレゼントしてもらったとき、わたしが感じたのと同じくらい、いや、それ以上にありすには喜んでもらいたい。
「……とりあえず全部回れば、何かピンとくるものがあるかもしれないわ」
このまま案内図を見ていても何も始まらない。
いくつかのお店の目星をつけて、わたしはそこを順々に巡ることにした。
こうして、何店舗かの雑貨屋さんを見て回って、ありすが喜んでくれそうなものを探す。ありすに貰ったようなヘアアクセサリーも、可愛くてありすに似合いそうなものがたくさんあった。ハンドクリームやハンカチもいい気がする。
真面目なありすだから、文房具もありだろう。
初めはどうしようかと悩んだけど、いざ探し始めるとすごく楽しい。1階から巡っていたプレゼント選びは捗り、今は4階にあるお店を巡っていた。
ありすと来た映画館も、ちょうどこの階にある。
と。
「あれ?」
次のお店に向かっている途中、なんだか見覚えのある人がいた気がした。
確かめるべく、わたしはプレゼント選びを中断して、少し急ぎ足でそちらに向かう。
そこにいたのは。
「ありす……?」
そう。
今、わたしがプレゼントをリサーチしに来た理由である、ありすがいた。一度は目を疑ったけど、間違いなくあれはありすだ。
ありすの家からこのショッピングモールは、それほど遠くはないけど、頻繁にくるような距離でもない。すごい偶然だ。
約束もしていないのに、休日にありすに出会えるなんて思ってもいなかった。嬉しくなって、声をかけようと近づいていく。だけど。
「え……?」
わたしは中途半端に手を伸ばしたまま、足を止めた。
だって、ありすの隣には……。
「…………」
あの後輩がいた。
二人とも楽しそうに笑い合っている。
「どうして?」
あの後輩と何を話していたか聞いたとき、ありすは何もないと言っていた。
期末テストの順位を褒めてくれただけだと。
「嘘、吐いたの……?」
別に、ありすが誰と遊んでたって、わたしに文句を言う権利はない。ありすはたくさん友達がいるから、そりゃあ、わたし以外とも遊ぶに決まっている。
それは普通のことだ。普通のはずなのに、どうしてだろう。胸の辺りがきゅっとなる。
最近、自分のことがよくわからなくなる時がある。
ありすと会ってからだ。
「……」
二人の間に入っていくなんてことは、わたしにできるはずがなく、わたしは二人の向かっている方向に背を向けて、家に帰ることにした。




