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ありすとてれす  作者: 春乃
150/259

150話 嘘、吐いたの……?

今回もてれす視点のお話です。

 ありすの誕生日プレゼント(ありすの誕生日は10月)のリサーチをするため、わたしは一人ショッピングモールへとやって来た。

 ありすと一緒に来た時も一緒に見た案内図を見て、わたしは頭を悩ませる。


「さて、どうしようかしら」


 人にプレゼントを渡すなんて経験がまったくないから、何をプレゼントしたらいいのかわからない。想像もつかない。

 あまり高価なものを渡しても、ありすは喜んでくれない気がする。逆に受け取ってもらえないだろう。それは嫌だ。ちゃんと受け取ってもらいたい。となると、やはり実用性があるもの? 

 実用性のあるもの、か……。


 再び思案を巡らせる。

 ありすは何をプレゼントしたら喜んでくれるだろうか。


「あ、そうだ」


 1つ、いいことを思いついた。

渡すものごとに、ありすの反応を想像してみることにした。一番喜んでくれそうなものを渡すことにしよう。

 しかし。


「……やっぱりダメだわ」


 3品ほどイメージしたところで、わたしは首を横に振る。

 思いついた時は名案だと思ったけど、この作戦が間違いなく失敗だったからだ。

 なぜならば、わたしの中にいる最上ありすは、わたしが何を渡してもすごく喜んでくれたから。何を渡しても同じような反応になりそうだった。


 思い上がりかもしれないけど、適当に買った赤ペンとか、購買のパンを渡しても、感激してくれそうな気がする。「てれすー!」って言って、抱きついてきそうだ。

 けど、それではダメだ。ちゃんと真剣に選んで、ありすに喜んでほしい。


 どうしようかと悩んで、わたしはヘアゴムに触れる。

 ありすがくれたこのプレゼントはすごく素敵で嬉しかった。わたしはありすに好みを言ったことはなかったと思うけど、ありすはどうやってこのヘアゴムを選んでくれたのだろう。

 ありすにプレゼントしてもらったとき、わたしが感じたのと同じくらい、いや、それ以上にありすには喜んでもらいたい。


「……とりあえず全部回れば、何かピンとくるものがあるかもしれないわ」


 このまま案内図を見ていても何も始まらない。

 いくつかのお店の目星をつけて、わたしはそこを順々に巡ることにした。




 こうして、何店舗かの雑貨屋さんを見て回って、ありすが喜んでくれそうなものを探す。ありすに貰ったようなヘアアクセサリーも、可愛くてありすに似合いそうなものがたくさんあった。ハンドクリームやハンカチもいい気がする。

 真面目なありすだから、文房具もありだろう。


 初めはどうしようかと悩んだけど、いざ探し始めるとすごく楽しい。1階から巡っていたプレゼント選びは捗り、今は4階にあるお店を巡っていた。

 ありすと来た映画館も、ちょうどこの階にある。

 と。


「あれ?」


 次のお店に向かっている途中、なんだか見覚えのある人がいた気がした。

 確かめるべく、わたしはプレゼント選びを中断して、少し急ぎ足でそちらに向かう。

 そこにいたのは。


「ありす……?」


 そう。

 今、わたしがプレゼントをリサーチしに来た理由である、ありすがいた。一度は目を疑ったけど、間違いなくあれはありすだ。


 ありすの家からこのショッピングモールは、それほど遠くはないけど、頻繁にくるような距離でもない。すごい偶然だ。

 約束もしていないのに、休日にありすに出会えるなんて思ってもいなかった。嬉しくなって、声をかけようと近づいていく。だけど。


「え……?」


 わたしは中途半端に手を伸ばしたまま、足を止めた。

 だって、ありすの隣には……。


「…………」


 あの後輩がいた。

 二人とも楽しそうに笑い合っている。


「どうして?」


 あの後輩と何を話していたか聞いたとき、ありすは何もないと言っていた。

 期末テストの順位を褒めてくれただけだと。


「嘘、吐いたの……?」

 

 別に、ありすが誰と遊んでたって、わたしに文句を言う権利はない。ありすはたくさん友達がいるから、そりゃあ、わたし以外とも遊ぶに決まっている。

 それは普通のことだ。普通のはずなのに、どうしてだろう。胸の辺りがきゅっとなる。


 最近、自分のことがよくわからなくなる時がある。

 ありすと会ってからだ。


「……」


 二人の間に入っていくなんてことは、わたしにできるはずがなく、わたしは二人の向かっている方向に背を向けて、家に帰ることにした。


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