148話 美月ちゃんと映画
それから1週間が経過して、美月ちゃんと映画を観る日。
わたしと美月ちゃんの家は、方向こそ反対だけど、最寄り駅は同じ場所だそうなので、一旦そこに集合することになった。
後輩を待たせるわけにはいかないので、少し早めに出発したので、約束の時刻よりもけっこう早めに到着してしまった。
土曜日ということもあって、駅の中は多くの人が行きかっている。前にてれすの誕生日会をしたときは平日だったから、その差は歴然だ。
はたして美月ちゃんと上手く合流できるか、少し心配になってくる、と、わたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
「最上先輩!」
わたしの姿を見つけて走って来たのだろう。やって来た美月ちゃんは息を切らしていた。
スマホで時間を確認すると、まだ集合時間の10分前だ。
「そんなに急がなくてもよかったのに」
「いえ、あの。先輩をお待たせするわけには」
「気にしなくていいよ。それに、わたしも今来たところだし」
「ほんとですか?」
「ほんとほんと」
美月ちゃんは微妙に疑うような視線を送って来るけど、最終的には渋々納得してくれた。
「……わかりました」
「それじゃ、行こうか。映画って、ショッピングモールのところでいいの?」
「はい。見られるなら、わたしはどこでも」
券売機でショッピングモール前までの切符を買って、ちょうどのタイミングで来てくれた電車に乗り込む。駅の中と同じく、電車の中も多くの人がいた。
電車に揺られながら、わたしは美月ちゃんに尋ねる。
「ねぇ、美月ちゃん」
「はい」
「美月ちゃんって、映画好きなの?」
「え? あ、はい。けっこう好きです」
やっぱりそうみたいだ。
前回、映画館で会った時は妹さんと映画を見に来ていたみたいだし、映画好きなお家なのかもしれない。それに、体育祭があって疲れているのに妹さんと一緒に見るってことは、美月ちゃんは良いお姉さんなのだろう。
「そういえば、妹さん、えっと美央ちゃんだったっけ?」
「はい、美央です」
「美月ちゃんに妹がいるって、知らなかったよ。元気してる?」
わたしの質問に、美月ちゃんは苦笑いで答える。
「おかげさまで。元気すぎて大変だけですけど……」
「わたしは一人っ子だから、妹ってちょっと憧れるんだよね」
これは一人っ子あるあるではないだろうか。
兄弟姉妹がいる人は、喧嘩ばっかりだよ? とか返事することが多いけど、結局仲良くしているというか大切に思ってるから、すごく羨ましい。
てれすは妹っぽいところもあるけど、やっぱり友達というか親友というか、ちょっと違う。でも、姉か妹かで言えば、てれすは妹属性じゃないかな、と思う。
そんな感じで会話していると、やがて目的の駅に到着した。
駅を出て、ショッピングモールへ向かう。映画館はてれすときたことがあるし、パンケーキを食べにも来たので、迷うことなく映画館まで行くことができた。
「うわぁ、けっこう人いるね」
「ですねぇ」
さすがは休日。
ショッピングモールの中は人でごった返していた。たぶんだけど、これが明日、つまり日曜日ならもっとすごいことになっていたに違いない。
そこは土曜日にさそってくれた美月ちゃんに感謝する。
「美月ちゃん、どれ見るの?」
「えっと、あれです」
美月ちゃんが指で示した先にあるポスター。そこには綺麗な桜の下にいる男女が描かれていた。
「『あなたの心臓になりたい』……?」
「はい。けっこう話題になっている小説の映画化なんです」
「へぇ! そうなんだ」
嬉々として話す美月ちゃん。だけど、タイトルからは内容がまったく読み取れないというか、予想できない。二人とも制服姿だから、青春もの、なのかな?
話題の小説の映画化ということは、おもしろいのは間違いないだろう。
チケットを買って、わたしと美月ちゃんはシアターへ移動した。




