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ありすとてれす  作者: 春乃
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147話 美月ちゃんと夏休み

 てれすを見送って、わたしはお家に帰った。

 夕ご飯までの時間、自分の部屋で夏休みの宿題をすることにする。わたしは昔から、小学生の時から、夏休みの宿題は7月中に終わらせている。

 だけど。


「てれすは、どうなんだろ……」


 今日のお誕生日会で喜んでくれた、てれすの顔を思い浮かべる。

 1学期の間のてれすを見る限りは、てれすは宿題なんてやらなさそうだ。でも、さすがに夏休みの宿題は提出しないと怒られてしまうだろう。去年まで、どうしていたのだろうか。

 去年がどうだったかはわからないけど、たぶん、早めに終わらせる性格じゃないと思う。ということは、だ。


「わたしも宿題を残しておけば、一緒にできる……?」


 そう。夏休みの中盤から終盤にかけて、一緒に宿題をしよう、という理由で会うことができる。

 わたしだけ宿題が終わっていると、てれすはきっと一人でやることを選ぶと思うから、一緒にやろうとさそうのはとても魅力的だ。我ながら、名案を思いついたと思っていると、MINEに着信があった。


 誰だろう、と画面を見ると、その相手はてれすだった。


『ありす、今日はありがとう』


 カラオケ屋さんから帰るときも言ってくれたのに、やっぱりてれすは真面目だ。でもでも、てれすからの連絡は嬉しいので、鼻歌混じりに返信する。


『ううん。喜んでくれたなら、すっごく嬉しい』


『本当にありがとう。プレゼント、大切にするわ。

そういえば、ありすの誕生日はいつなの?』


 あれ? てれすに言ってなかったっけ?

 というか、なんかこのタイミングで教えるのは、自分の誕生日のときに祝ってくれ、と言っているみたいで、なんだか気が引ける。

 とはいっても、このまま既読無視するとか、教えないというのはもっとおかしな話になるから、わたしはポチポチと自分の誕生日を打ち込む。


『10月15日だよ』


『10月。わかったわ。絶対、わたしもお祝いするわ』


『えぇ、いいよ。変に気を遣わなくても』


『いいえ。絶対にする。自分だけされるのって、嫌だもの』


 画面越しだから、てれすの顔は見えていないけど、確固たる意志が垣間見えた。

 まだまだ先の話になるとはいえ、てれすにお祝いしてもらえると考えると、嫌なわけがない。


『ありがと。楽しみにしてるね』


『ええ』


 てれすから短く返事が送られて来る。そして続けて、メッセージが。


『あ、夕飯みたいだから、わたしは行くわね』


『了解』


 と返信しつつも、わたしはちょっと驚いた。

 ご飯ということは、てれすはお母さんと食べるということだと思う。いつも忙しそうで、てれすは誕生日もあまりお祝いされないと言っていた。

 今年は、てれすのお母さんも娘のために時間を作ってあげたのかもしれない。


 MINEの画面を閉じる。少し早いかもしれないけど、わたしも夕飯のお手伝いに行こうかな、と思っていると、再びMINEに着信があった。


「てれす、かな? 何か伝え忘れてたことでも――」


 しかし、画面に移されていた名前はてれすではなかった。


「美月ちゃん?」


 どうしたんだろう。と首をかしげながら、トーク画面に移動する。


『最上先輩。今、時間大丈夫ですか?』


『うん、大丈夫』


『あの、この前話してたことなんですけど……』


『遊ぶって、話ね』


 美月ちゃんとも、期末テストの勉強をするときに、夏休みの何か一緒にして遊ぼうという約束をした。

 美月ちゃんにおまかせする形になってしまっていたんだけど、どうやら決まったみたいだ。


『はい。それで、来週の土曜日って空いてますか?』


『うん。暇』


『えっと、それじゃあ、映画に行きませんか?』


『いいよ。映画ってことは、あそこのショッピングモール?』


『はい。いいですか?』


『もちろん!』


『ありがとうございます!』


 そういえば、この前てれすと遊びに行ったとき、美月ちゃんに会ったのも映画館だったなぁ、と思い出した。

 美月ちゃんは映画が好きなのかもしれない。


 忘れないようにカレンダーに印をつけていると、一階からお母さんの「ご飯よー」という声が聞こえた。


「はーい! すぐ行く!」


 スマホを机の上に置いて、わたしは部屋から出た。


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