141話 パンケーキ屋さんへ
学校から駅に向かって、わたしとてれすはショッピングモールにやって来た。
今回の目的であるパンケーキ屋さんは、ご飯屋さんが並んでいるエリアの一角にできたらしい。
「えっと、たしか四階だったよね?」
「ええ。前に映画を観た後、お昼ご飯を食べたときの近くなのよね?」
「うん。そのはずだよ。あ、見て見て、てれす」
正確な場所を確認するために、モール内のマップを見ようとしたのだけど、その前にパンケーキ屋さんのポスターを発見した。
お店がオープンしたばかりということ、ここが入り口ということもあって目立つように壁に貼られていた。
「四階であってるね。エスカレーターで上がってすぐのところみたい」
「そう。なら、行きましょうか」
近くのエスカレーターで四階まで昇っていく。
「てれす、今更なんだけど」
「どうしたの?」
「この時間にパンケーキ食べて、夕飯大丈夫?」
「本当に今更ね……」
もうすぐお店というところで聞いたので、てれすは苦笑する。さすがにここまで来て引き返すという気はないけど、パンケーキって、けっこうお腹いっぱいになるイメージがあった。
「わたしは問題ないわよ。どうせ今日もお母さんは夜遅いだろうし」
「あ、ごめん……」
てれすのお母さんはお仕事がものすごく忙しいということを忘れていた。お父さんのことはよくわからないけど、てれすはあまり家族と時間を一緒に過ごしていないみたいだった。……ちょっと配慮に欠けていたかもしれない。
反省していると、てれすはあまり気にした様子もなく、きょとんとして首をかしげた。
「どうしてありすが謝るの?」
「ううん、なんでもないよ」
「そう? それより、ありすは夕飯大丈夫なの?」
「たぶん。白ご飯を少なくすれば大丈夫だと思う」
甘いものは別腹だとよく言うし。きっと、そのくらい調整で平気……なはず。
そうこうしていると、四階にやって来た。
前回は映画館を探すのに少し苦労したけど、今回はすぐに見つけることが来た。なぜならば、行列ができていたから。
制服姿の女の子たちが大勢並んでいて、活気に満ちていた。
「わっ、すごいね、てれす!」
「そ、そうね……想像以上だわ……」
まさか平日に行列ができるなんてびっくりだ。放課後だからだろうか。
休日ならこのくらいは当たり前だと思うけど、日曜日のお昼なんかはもっとすごい人になるってこと。正直、想像できなかった。
食べるためには並ばなければならないので、てれすと一緒に列の最後尾に並ぶ。
「どのくらいかな?」
「わからないわ。そもそも、行列に並ぶことなんて、ほとんど経験したことないもの」
「たしかに、てれすは待つのあんまり好きそうじゃないかも」
「ええ。ありすと一緒じゃなければ、まず並ばないわ」
「あはは、ありがと。二人で並ぶとお話しできるからいいよね」
「ええ」
前に並んでいるお客さんの人数を数えてみると、だいたい15人ほどみたいだ。たぶんだけど、30分もしないくらいで入れるのではないだろうか。
待ち時間の間、話題は高井さんと赤川さんの追試のことになる。
「今、追試受けてるとこかな?」
「そうね。ちょうど終わるころじゃないかしら。赤川さんは2教科あるから、まだやっているかもしれないけど」
「二人とも合格できるかな?」
「どうかしらね。正直、時間的にはあまりできているとはいえないから、心配ね」
「そうだよね……」
昨日と今日のお昼休みしかやっていない。たぶん二人のことだから、家で自習や休み時間にも少しくらいはやったと思うけど、わたしもてれすと同じで心配だ。
そんな風に、てれすとお話していると、「次お待ちのお客様」と店員のお姉さんに声をかけられた。どうやら順番が来たらしい。
「行こ、てれす」
「ええ」




