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ありすとてれす  作者: 春乃
135/259

135話 期末テストの結果

 先週行われた期末テストを乗り越えて、迎えた月曜日。

 7月最初の登校となるわけだけど、わたしはものすごく、そわそわしていた。金曜日にすべての教科のテストが終わったわけだけど、その日の午後から土曜日曜は、ずっとテストのことが気になってしょうがなかった。


 休日を挟んだから、きっとテストの丸付けは終わっているだろう。木曜日や金曜日に行われたテストは採点する時間が少ないから大変だと思うけど、これまでのテストは全て休日明けの月曜日に順位表とか返却が行われたから、今回もそうに違いない。


「あぁ、緊張する……」


 自分の部屋で制服に着替えていると、そんな言葉が思わず口から零れてしまった。

 テスト返却で緊張するのはいつものことだけど、やっぱり今回は違う。問題を解いているときは集中していたから忘れていたけど、てれすとの約束があるから、いつもに増して緊張と不安で胸の中がいっぱいだった。


 てれすはきっと、大丈夫。わたしはどうだろうか……。

 テスト自体はもう終わったことだから、どうにもならない。わかってはいるけど、そわそわする。すると、机の上に置いていたスマホが鳴った。


「あれ、メッセージだ」


 スマホを開いてMINEを起動させると、てれすからメッセージが届いていた。


『今日、一緒に登校できないかしら?』


「もちろん、いいよ! っと」


 ポチポチとボタンを押して、てれすに返信する。

 てれすとMINEをしていると、少しだけど緊張が弱くなった気がした。もしかすると、てれすはわたしのことを気にしてくれたのかもしれない。わたしのために考えて、早起きをしてくれたと思うと、ちょっと嬉しい。

 何回かやりとりをして、前にも待ち合わせをした駅で合流することになった。




 それからてれすが駅に到着する時間に合わせて、わたしはお家から学校に向かった。いつもてれすと帰るときに分かれることになる交差点で、駅のほうに歩を進める。

 駅の中に入って、てれすのことを探す。

 前のときは、すぐにてれすのことを見つけることができたけど、今回はどうだろうか。平日の朝ということで、スーツ姿の大人や、制服姿の学生でごった返していた。


 スマホで連絡したほうがいいかなぁ。

 そう思ってカバンからスマホを取り出そうとすると、横から声をかけられた。


「ありす」


 振り向くと、そこには額にうっすらと汗を浮かべたてれすが立っていた。


「てれす」


「ありす、ごめんなさい。急に連絡して大丈夫だったかしら?」


「うん、わたしは平気だよ。というか、この人の中で、よくわたしを見つけられたよね」


「そうかしら? すぐに見つけることができたけど……」


「え、もしかして、わたし変な格好してる?」


「いえ、いつも通り素敵よ」


 制服をおかしな着方しているとか、すごい寝癖がついていて、すぐに見つけることができたのかと思ったけど、どうやら違うらしい。ほっと息を吐く。

 すると、てれすがスマホの画面を見て口を開いた。


「……あ、時間。行きましょうか」


「うん」


 てれすに促されて、わたしは学校に向かった。

 その道中。

 学校が近づいて、周りに同じ制服の女の子たちの姿が増えるたびに、心臓が大きく脈を打つ。


「あぁ、すっごく緊張する」


「大丈夫よ」


「そうかな」


「ええ。間違いないわ。ありすだもの」


「てれすにそう言われると、ちょっと自信が出てきたかも。あぁ、でも、ちゃんと名前書いたかな……」


「それはさすがに大丈夫よ。だって、一番最初に絶対に名前を書くでしょう?」


「う、うん。そのはず」


 弱音を吐いては、てれすに励まされるということを繰り返す。すると、ついに学校に着いた。

 玄関で上履きに履き替えて、二階に上がる。二階に上がれば、すぐに2年生の掲示板があって、そこに順位表が貼りだされているはずだ。


 階段を上って2階にやって来ると、掲示板の前に人だかりができていた。これは間違いなく、順位表が貼りだされているということ。

 鼓動が早くなるのを感じながら、わたしはてれすと人をかき分けて、掲示板の前に移動した。


「お願いっ」


 ぎゅっと閉じた瞳を、ゆっくり開く。

 下から順々に名前を確認。まだ名前が出ないことに安心していると、


「あったわ」


 てれすが図書館で探していた本が見つかったときのような感覚で言った。

 それにつられて、一気に上を見る。


一番上には、高千穂てれす。そして――


「ほ、ほんとだ!」


 その下。

 2番目のところには、最上ありす、と書かれていた。

 自分の名前で間違いないことを何回も確認して、夢でないとわかると、大きな安堵の息が出た。同時に、安心したからか、力が抜けて足元がふらついてしまった。

 

「あ……」


「ありす!?」


 隣にいたてれすが、驚きながらも瞬時に抱きとめてくれる。


「ご、ごめん。安心したら、ちょっと気が抜けちゃって」


「ほら、大丈夫だったでしょう?」


「あはは、てれすの言う通りだったね」


「ええ」


 たぶん、わたしは心配しすぎだったんだと思う。でも、そのくらい今回の約束は守りたかったということ。そして、てれすとの約束を守ることができた。

 どうであれ、それが一番。


 わたしはようやく、期末テストの重圧から解放されたのだった。

 これで、これからは夏休みのことを心置きなく考えられる!


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