134話 期末テスト
放課後になって帰り道。
わたしはてれすと一緒に、帰路についていた。なんだか今日は高井さんの誕生日だったということもあって、盛り上がった一日になったけど、いよいよ期末テストが明日から始まる。
「明日からテストだねぇ」
「ええ、そうね」
隣を歩くてれすの表情はいつもと全くもって変わりない。凛々しい美人さんだ。一方の私はと言うと、明日からのテストを意識しまくりだった。
「いやぁ、ちょっと緊張する」
「そう?」
「うん。だってさ、今までのテストは。自分が今までやってきたことを発揮するぞ! ってだけだったから。ミスをしても、自分に返って来るだけだった。でも」
でも、今回は違う。
今までは、特に順位にこだわったことはなかった。だけど、今回はそうじゃない。一番と二番をてれすと一緒にとろうね、と約束をした。そして、それが達成出来たら、何かお祝いのようなことをしようと。
今回の期末テストは、今までの何倍も気合を入れなければならない。見直しも入念に行わなければ。
「誰かのためにテストをがんばるって、初めてで」
私の言葉に、てれすも同意してくれた。
「たしかに、そうかもしれないわね」
「でしょ? でも、てれすは今回も余裕そうだね」
「そうかしら」
「うん。なんにも変わってないから、すごいなって思うよ」
「まぁ、いつも通りやるだけだから」
「それは、たしかにそうだね」
「ありすも、あんまり力を入れずに、リラックスして?」
「うん。ありがと」
気を遣ってくれたてれすに感謝しつつ、さすがてれすはすごいなぁと感心する。さすてれだ。
とはいえ、不安だから帰ったらしっかり復習しておこうと、帰宅してからの予定を心の中で立てていると、てれすとのお別れとなる交差点にやって来てしまった。
「あら、もう来ちゃったか」
「ええ。それじゃあ、ありす。また明日」
「うん。じゃあね」
手を振って、わたしは自分のお家のほうに足を踏み出す。が、そのとき。
「あ、待ってありす」
「どうしたの?」
てれすに呼び止められて、振り返る。
「その、ありす、今日も勉強するのよね?」
「うん。そのつもり」
「えっと、あまり夜更かししちゃダメよ?」
「だ、大丈夫だよぉ。ありがと」
「いえ、いいの。心配はしていないけれど、一応、言っただけだから」
「あはは、ありがとね」
お礼を言って、改めて手を振って別れる。駅に向かって歩くてれすの背中を見つめながら、もう一度てれすに感謝をした。
てれすに行ってもらわなかったら、緊張からけっこうな時間まで復習をしてしまっていたかもしれない。明日のためにも、今日は早く就寝することを心がけよう。
このあとの予定を組みなおしながら、わたしは自宅に向かって歩を進めた。
そして、翌日。
いつもの教室で、試験監督の先生がわたしたちに言う。
「はーい。問題用紙と解答用紙はちゃんと行き届きましたか?」
ついに、期末テストが幕を開けるのだった。




