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ありすとてれす  作者: 春乃
133/259

133話 てれすの誕生日って

 日曜日のお泊り会を終えて月曜日。

 期末テストを乗り越えれば、もうすぐ夏休みだなぁ、なんてことを考えながら学校に行って教室に着くと、その一角がなんだか盛り上がっていた。


 どうしたんだろ、と首を捻りながら向かうと、中心にいるのは赤川あかがわさんと高井たかいさんのようだった。


「赤川さん、どうしたの?」


「あ、最上もがみさん!」


 高井さんを囲むようにして話をしていた数人の生徒、もちろん話しかけた赤川さんもわたしに顔を向ける。


「あのね、今日高井の誕生日なんだ」


「え! そんなの!?」


 ちらりと席に座っている高井さんを見る。

 高井さんはこくりと小さくうなずいて、恥ずかしそうに目を逸らした。


 なるほど。そういうことで、高井さんと赤川さんたちが盛り上がっていたらしい。高井さんには体育祭のときとか、てれすと喧嘩しちゃってヒヤヒヤしたけど、ちゃんと仲直りもして、今ではすごくお世話になっている。

 すでに今日、何度も言われて飽きちゃってるかもしれないけど、ちゃんと伝えておこう。


「高井さん、お誕生日おめでとう」


「ありがと、最上さん」


「あ、でも、どうしよう。わたし何も持ってきてない……」


 知らなかったとはいえ、せっかくの誕生日なのに、わたしには何もプレゼントできそうなものがない。


「いいよ最上さん。気持ちだけで、すごく嬉しいし」


「そ、そうかなぁ。でも」


 何かないか。と思案を巡らせていると、わたしの制服の裾がちょいちょいと引っ張られた。


「ありす、どうしたの?」


「あ、てれす。今日ね、高井さんがお誕生日なんだって」


 来る途中に、コンビニで買い物をしてきたのだろう。てれすの手にはコンビニのレジ袋が握られていた。


「そう」


「でもね、わたし知らなかったから、何も準備してなくて」


 わたしが自嘲すると、レジ袋を持っていたてれすは再び「そう」とうなずいて、袋をゴソゴソ探り始めた。

 そして、みんなが大好きなチョコレートのお菓子であるポリッツの赤い箱を取り出した。


「はい。誕生日おめでとう」


「あ、ありがと、高千穂たかちほさん」


 てれすからの祝福が意外だったのか、高井さんは少し驚いたような表情を浮かべつつも、てれすからのお菓子を受け取った。


「それから、これはありすの分」


 てれすはもう一回袋に手を入れて、同じ赤色の箱を高井さんに渡した。


「はい」


「え、いいの高千穂さん。こんなにもらっちゃって」


「ええ。だって、それはありすからだから」


「わかった。ありがとう」


「いえ」

 

 こうして、わたしはてれすに助けてもらった形になって、このままショートホームルームまでおしゃべりに興じた。

 チャイムが鳴って先生が来ると、それぞれの席に戻る。


「てれす、さっきはありがとね」


「いえ、いいのよ」


「でも、てれすの食べる分がなくなっちゃったんじゃない?」


「大丈夫。もう1箱あるから」


 ほら、とてれすは、赤色の箱をわたしに見せてくれた。

 同じお菓子を3つもどうして買ったのかなぁ、とか、前にポリッツを食べてた時(正確にはわたしは食べてないけど)先生に怒られたなぁとか思い出したけど、その言葉たちは飲み込んだ。


「そ、そういえば、てれすの誕生日っていつなの?」


「7月24日よ」


「ほ、ほんと!?」


「ええ。嘘はつかないわよ」


「あはは、そうだよね。でもそっか、夏休みなんだね」


「……そうね」


「ちょっと意外かも。てれすのイメージ的に、秋とか冬かなって思ってた」


 夏っていうと、暑い感じだからてれすっぽい感じはない。クールビューティーなてれすは、冬生まれってほうがしっくりくる。肌とか白いし。

 あ、でも。てれすは顔を赤くしたりしてることもあるから、夏っぽいといえば、夏っぽいのかも……?


 ともかく、これは良い情報をゲットした。

 夏休みの予定に入れなくては。


「お誕生日会、やろうね」


「いいわよ、別に」


「やろうよ~」


「ま、まぁ、ありすが言うのなら」


「やった」


 てれすのお誕生日まで、約一か月。今は期末テストを頑張らなきゃだから、あまり考えられないけど、終わったらいっぱい考えなきゃ!

 プレゼントも選びに行かないとね。


結城天です。こんにちは。

ありすとてれすを読んでくださった皆様。本当にありがとうございます!

今回のお話から初夏編です。

これからも、どうぞよろしくお願いします!

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