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ありすとてれす  作者: 春乃
132/259

132話 お泊り会を終えて

 そして夕方。てれすがお家に帰る時間になった。

 お泊りセットや勉強道具を片付けて終わると、てれすはカバンを肩にかけて立ち上がった。


「てれす、忘れ物はない?」


「ええ。おそらく」


 うなずきながらも、てれすはもう一度わたしの部屋を見渡して、忘れ物がないかどうかを確認する。


「なさそうね」


「まぁ、あってたとしても、いつでも渡せられるし、大丈夫だよね」


「そうね。もし何か忘れていたら、明日学校に持ってきてもらってもいいかしら」


「おっけー」


 わたしが首肯すると、てれすは「よいしょ」とカバンを肩に掛け直した。


「そろそろ帰るわね」


「……うん」


 今回のお泊り会ですべきことは、もうなにもない。引き留める理由もない。ちょっと寂しいけど、明日は普通に学校があるし、てれすの帰る時間が遅くなってしまうのは迷惑だ。

 わたしの部屋を出ていったてれすの後に続いて、わたしもお見送りのために階段を下りる。


 玄関へ向かい途中、てれすがリビングにいるお母さんに、


「ありすのお母さん。とてもお世話になりました。ありがとうございました」


 と言うと、お母さんがリビングから出てきた。


「いいえ、またいつでも来てね」


「はい。本当にありがとうございました」


 ペコリとてれすは頭を下げて、靴を履く。

 トントンとつま先をして、てれすがわたしに振り返って言った。


「ありす、ありがとう。楽しかったわ」


「ううん。わたしのほうこそ。また明日ね」


「ええ」


 わたしが手を振ると、てれすも小さく手を振り返して、お家に帰って行った。

 ガチャリと寂しい音を立てて閉まった扉を見つめていると、お母さんがわたしに言う。


「ありす。晩ご飯もうすぐだから」


「うん」


 返事をすると、お母さんも玄関からいなくなって、すごく静かで寂しく感じてしまう。

 てれすが忘れ物に気づいて、もう一回顔を見せてくれないかな、なんて思うけど、てれすのことだから、忘れ物なんてしていないだろう。あったら明日渡して、と言ってもあれだけ確認していればきっとない。


短く息を吐いて、わたしは晩ご飯までの時間、自分の部屋に戻って過ごすことにする。しかし、綺麗に畳まれたお客さん用のお布団を見ると、さっきよりも大きな寂しさが込み上げてきた。

ついさっきまでてれすがいたから、二日間ずっとてれすと一緒だったから、部屋にてれすがいないのが、すごく寂しかった。


「てれす……」


 でも、また明日会える。うん。大丈夫。

「よしっ」と気合を入れて、わたしはお布団を隣の部屋に戻そうとしたとき。


「……あれ?」


 机の下の端っこ、ちょうど布団の下あたりに、何やら落ちているのが目に入った。


「なんだろ」


 手に取ってみると、可愛らしい水色のシャーペンだった。でも、わたしのもではない。とはいえ、このシャーペンには見覚えがある。いつもてれすが使っているものだ。

 布団の陰になっていたとはいえ、あんなに忘れ物がないか確認していたのに、てれすが忘れ物をしていたことに思わず笑みが零れる。


「ふふっ、てれすったら。明日渡してあげなくちゃ」


 そう思うと、少しだけ寂しさが薄れて、明日てれすと会うのが楽しみになった。


結城天です。こんにちは。

読んでくださった皆様。本当にありがとうございます。


今回のお話でお泊り会編はおしまいとなります。

次は初夏編です。

これからもありすとてれすをよろしくお願いします!

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