表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありすとてれす  作者: 春乃
130/259

130話 てれす先生


 部屋に戻ってきたわたしとてれすは、お昼ご飯までの時間、何をしようかと悩んでいた。勉強をするというのは決定しているんだけど、内容をどうするのか。

 復習は何回やってもいいと思うけど、できるだけ効率よく勉強したい。特に、今回のテストは、二人で一番と二番をとろうね。という約束をしているので、今まで以上にがんばらないといけない。


 お昼ご飯までの時間にできること。

 それを少しの間考えて、わたしはてれすに提案する。


「てれす、問題の出し合いっこでもしない?」


「そうね。いいと思うわ」


 前回、中間テストのときに、てれすと勉強した後にもやったけど、問題を想定して出題するから、テストっぽいし、出すほうも答えるほうも復習になる。

 

「それじゃあ、まずは数学からでいい?」


「ええ。わたしはなんでも」


「おっけー」


 さすがに数学を口頭でやるわけにはいかないので、わたしはルーズリーフを取り出して、てれすに渡す。


「これに出そうな問題を書いて、交換しよ?」


「なるほど、わかったわ。小テスト、みたいなものね」


「うん、そんな感じ」


 てれすの言葉を首肯して、わたしも自分の分のルーズリーフに問題を書いていく。問題が完成したら、一応、別の紙に答えを計算して、わたしの回答を出しておく。


「てれす、できた?」


「もうすこし、待ってくれる?」


「うん」


 それから少しして、てれすの問題も完成した。

 ルーズリーフを交換して問題を解き始める。てれす先生の作成した問題。それだけ聞くとかなり難しそうだけど……。


「あれ? そうでもないかも」


 難問、というよりも、いかにもテストっぽい感じだった。

 この問題がテスト本番で出題されたとしても、疑わないくらいの感じだ。小中高と、これまで11年間テストを受けてきた経験から、テストっぽいなぁと思った。


 意外と、と言っちゃうと失礼かもしれないけど、てれすは先生とか向いているのかもしれない。

 見ての通り頭は良いし、色々知っているし、美人だし、人気者の先生になること間違いなしだ。


「ありす、どう? ちゃんと問題になっているかしら」


「うん。問題になっているどころか、本物のテストっぽい」


「それなら、よかったわ」


 安堵の息を吐いて、てれすはわたし作成の問題に戻った。

 そして少しして。


「よし、たぶんこれで合ってるはず」


 見直しをしっかりとしてから、わたしはシャーペンを机に置いた。同じくらいのタイミングで、てれすも解き終わったらしい。わたしのほうを見ていた。


「てれす、できた?」


「ええ」


「それじゃ、交換して採点しようか」


 あ、なんだかすごく先生っぽい。

 そんなことを思いつつ、てれすと交換して、てれすの回答を見る。途中式、それから答えもわたしとまったく同じだった。


「てれす、大正解!」


「よかったわ。ありすも、正解よ。さすがね」


「あはは、ありがと」


それから、数学だけでなく、他の教科もお互いで問題を作って解き合うことになって、四回目くらいの交換をしたとき。てれすの作った国語の問題を解いているときに、ふと思い出した。


「あ、そういえば、てれす」


「なにかしら」


「年号を覚えるのに、語呂合わせみたいなのあるじゃん?」


「鳴くよウグイス、平安京。みたいなもの?」


「そう、それ」


 今、わたしが問いているのは国語の問題なので、まったく関係ないけど、思い出したので話す。


「前にテレビで見てたら、面白いのがあったの」


「へぇ、どんな感じなの?」


「えっとね。承久の乱なんだけど」


「承久の乱。鎌倉時代に、後鳥羽上皇が幕府を倒すために起こした戦いよね」


「うん。それは1221年なんだけどね、てれす、わかる?」


 尋ねると、てれすは一瞬だけ考えて、すぐに降参した。首を横に振る。


「わからないわ」


「1221年。ワンツーツーワン、承久の乱! らしいよ」


「……え?」


「だから、ワンツーツーワン、承久の乱」


「それ、語呂合わせなのかしら」


 もっともなことを、てれすは言う。


「うーん。でも、テレビで言ってて、すごく覚えやすいなぁって思った」


「たしかに、インパクトはあるわね」


「まぁ、年号と承久の乱! ってことだけしか覚えられないから、中身はあんまり覚えられないけどね……」


「……そうね」


 てれすと苦笑いしながら、問題に戻る。

 そうして何問くらい、てれすと出し合いっこをしたころか、お母さんが一階から「ご飯よー」と呼んでくれた。


「てれす、いこ?」


「ええ」


 頭を使って、いい感じにお腹も空いてきている。

 ダイニングに向かうため、階段を下りている途中、とりあえず、1221年に承久の乱が起こったというのは、一生忘れないだろうな、と思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ