126話 朝ごはんと2日目の予定
ダイニングには、すでにお母さんが用意してくれたご飯が並べられていた。時間的には朝というよりもお昼のほうが近いけど、わたしとてれすにとっては朝ごはんなので、軽めのものだ。
てれすと隣同士に座って、両手を合わせる。
「いただきます」
まずはトーストを口に運ぶ。
じゅわっとハチミツの甘い味わいが口の中に広がって、幸せな気分だ。
ベーコンエッグやサラダなんかも三角食べでもぐもぐする。
学校の時と変わらない、お母さんの美味しい朝食に舌鼓を打っていると、キッチンで飲み物を作っていたお母さんがこちらにやって来た。
マグカップをわたしとてれすに差し出しながら、尋ねる。
「てれすちゃん、どう? 口に合うかしら」
「はい。美味しいです」
しっかり咀嚼をしてからてれすが答えると、お母さんは安心したように一息ついて、わたしの向かいの席に腰を下ろした。
お母さんが持ってきてくれたコーヒー牛乳を飲みながら、今日の予定を考えることにした。さて、どうしようか。
思案しながら、二人の会話に耳を傾ける。
「よかった」
「その、あんまり、こういうご飯食べないので……」
「そう。いつでもうちに来てくれていいからね」
「……ありがとうございます」
てれすがお礼を口にすると、お母さんは「さて」とつぶやいて、わたしのほうに改めて顔を向けた。なんだろう。
「それにしても、あなたたちって、仲いいわよね」
「え?」
急にそんなことを言われたものだから、思わず聞き返してしまった。
わたしとてれすの仲はもちろんいいけど、どうしたのだろうか。疑問が浮かび上がる。
質問したお母さんの顔は、なぜかニコニコ――というより、ニヤニヤしていた。
「うん。いいと思うけど」
「いや~、今朝ちょっと様子を見に行ったら、一緒に寝ているんだもの」
「――ッ!?」
「びっくりしたわ~。うふふ」
「な、なななななんで!?」
動揺を隠せなかった。
いや、だって、だって。
まさか、あれをお母さんに見られてただなんて。しかも、てれすがわたしを起こしているときじゃなく、わたしもてれすもぐっすり寝てるとき。
これは言い訳のしようがない。
「なんでって、いつもなら起きてる時間に、あなたがいなかったから。心配になって様子を見に行ったのよ。ごめんなさいね?」
「それは、わたしもごめん。二度寝しちゃって……」
「まぁ、たまにはいいんじゃない? 仲が良いのも、もちろんいいことだと思うわ」
そのままの流れで、お母さんはてれすに同意を求める。
「ね、てれすちゃん?」
「は、はい」
「ありすと一緒でちゃんと寝られた?」
「はい。それは大丈夫です。よく寝られました」
「そう、それならよかったわ」
「はい」とてれすは短く返して、ご飯を食べ進めていく。しかし、その途中。もぐもぐしながら首をかしげた。
「でも、どうしてありすが、わたしの隣で寝ていたのかしら。不思議だわ」
「たしかに、それもそうね。下の布団に落っこちたから、結果的に一緒に寝てたなら、わかるけど」
てれすとお母さんの視線が向けられる。
「い、いや~、なんでだろうねぇ。不思議だなぁ~。あはは」
「ありすは、ちゃんと眠れた?」
「うん。ちゃんと眠れたよ、てれす」
「そう。それなら、よかったわ。わたしのせいで眠れていないのかと思ったわ」
「それはないよ。大丈夫。あっそうだ」
「どうかしたの?」
「お昼から、どうしようかなって」
もちろん、昨日の夕方みたいに勉強をしてもいいけど、昨日かなりの範囲はできてしまったから、そこまで詰め込んで行う必要はない。
それに、勉強ばっかりしても、てれすがつまらないんじゃないかって思った。
とはいっても、特にいいアイディアが浮かんだわけでもない。
頭を悩ませていると、てれすが心配そうに言う。
「勉強、じゃないの?」
「うーん、やっぱりそうなるかなぁ」
どうしたものかと考えていると、お母さんが口を開いた。
「特にやることがないのなら、おつかい頼まれてくれない?」
「おつかい?」
「うん。牛乳が残り少なくて」
ということは、近くのスーパーに買い物ということになるだろう。てれすと体育祭の打ち上げで、焼肉パーティーのときにも使ったお店だ。
「うん。てれすは、どう?」
「わたしはもちろんいいわよ。あのスーパーに行くの?」
「そうなるね」
てれすも路湯称してくれたので、二人でおつかいに行くことになった。
一旦部屋に戻って、出かける準備をしてから、リビングに向かうと、お母さんから買うものリストが書かれたメモ用紙を受け取った。
「よーし、行こうか、てれす」
「ええ」




