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ありすとてれす  作者: 春乃
125/259

125話 添い寝

 コップを洗って、テレビの電源も消してから、わたしは階段を上がる。途中にてれすの姿がないので、どうやら私の部屋までは辿り着いたらしい。

 だけど、わたしの部屋の扉が開いたままになっていた。


「てれす?」


 声をかけるけど、もう寝てしまったのか、てれすの返事はない。

 中に入って、てれすのことを探す。

 しかし、てれすがさっきまで寝ていた布団には、誰の姿もなかった。

 

 首をかしげて部屋を見渡すと、てれすがわたしのベッドで眠っていることに気がついた。思わず声が出そうになったけど、てれすを起こすのは悪いので、なんとか口を押えて言葉を飲み込む。

 それから、ゆっくりてれすに近づく。


「て、てれす、どうしてわたしのベッドで……?」


 小声でつぶやくも、寝ているてれすかが返事をするはずもない。

 どうしてだろうと考えながら、寝息を立てて気持ちよさそうに眠っているてれすの近くに歩いて、腰を下ろす。

 あれだけわたしに寝顔を見られたくないと言っていたのに、こんなにも早く、またてれすの寝顔を見ることができてしまった。てれすの寝顔を見ていると、自然と笑みが零れる。


「やっぱり、眠かったんだ」


 てれすも家ではベッドで寝ているだろうから、寝ぼけてわたしのベッドのほうに来てしまったのかもしれない。

 そんな状態だったのに、わたしのために起きていると言ってくれたのだろうか。

 そう思うと、なんだか無性にうれしくなる。


「……」


 てれすの顔を見つめる。

 

「わ、わたしも少し、眠くなってきたかも……なんちゃって」


 誰が見ているわけでもないけど、言い訳するようにつぶやいて、わたしはてれすの掛布団をめくった。

 そこに自分の身体を、ゆっくり滑り込ませる。


「わたしの布団だし、少しくらい、いいよね……」


 てれすを起こさないように慎重に、横になる。めくった布団を整えて終わると、目の前に、てれすの顔があった。

 心臓が飛び上がりそうになるけど、なんとか踏み留める。


「――ッ!」

 

それはもう、目と鼻の先にてれすの顔が。

可愛くて美人。まつ毛が長くて、肌が透き通っている。髪がさらさらで、なんだかいい匂いも……。

あと、なんかいい感じにあったかくて――。






「――す」


 耳元で何か聞こえた気がする。


「ありす」


 これは、てれすの声?

 てれすが、わたしの名前を呼んでいる。


「ありす」


 ゆっくり目を開けると、やはりそこにはてれすがいた。


「え、てれす?」


「ええ、てれすよ。ありす」


 困ったように苦笑いを浮かべながら、てれすがうなずく。

 どうして、てれすがこんなに近くに。近くというか、隣にいる。

 

 少しずつはっきりしてきた意識で、思案を巡らせる。

 わたしのベッドにわたしとてれす。

 ……いろいろ思い出した。


「うわああ!?」


「ど、どうしたの?」


「わ、わたし、寝ちゃってた……」


 そうだ、少しだけならって思って、てれすに添い寝したんだった。そのまま眠ってしまったらしい。

 どうしよう。てれすに変なことをしたと思われているかもしれない。


「ありす?」


「へ?」


「おはよう、ありす」


「お、おはよ」


「大丈夫? 起きてる?」


「大丈夫だよ。起きてる」


 10時になったら起こしてあげると約束したのに、情けない。

 てれすにどう言い訳をしようかと考えていると、誰かが階段を上って来る足音が聞こえた。

 続けて、ノックがされる。

 わたしは慌ててベッドから降りて、お母さんのことを待つ。すぐにお母さんの声がした。


「ありす、てれすちゃん?」


「は、はい!」


「入るわよ~」


 扉が開かれる。

 お母さんはわたしとてれすを見て、意外そうに言った。

 

「あら、二人ともちゃんと起きてたのね」


「う、うん」


「何してたの?」


「え、いや、別に」


 まさか、てれすと一緒に寝ていただなんて言えるはずない。

 お母さんから目を逸らす。もちろん、てれすにも向けられない。お母さんは少し首をかしげながらも、言及することなく、うなずいた。


「そう。それじゃあ、ご飯食べられる?」


「うん」


「てれすちゃんも大丈夫?」


「はい」


「それじゃあ、早めに下りてきてね」


 お母さんが部屋から出ていって、わたしとてれすも遅くなった朝ご飯を食べに行くことにした。


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