122話 お泊り会就寝
それから、わたしとてれすはいい感じに集中して、テスト勉強を行った。黙々と勉強をしているてれすに、少し不安なところがあれば聞くという形で進む。
「てれす、ここは?」
「ここは……こうかしら」
「なるほど。ありがとね」
「いえ」
そんな何度目かの会話をして、わたしも個人の作業に戻ろうとしたとき、玄関が開く音がして声が聞こえた。
どうやら、お父さんが帰ってきたらしい。
てれすにも聞こえたらしく、てれすはわたしに首をかしげる。
「お父さん?」
「うん」
「休日なのに、遅いのね」
「そうかも。でも、てれすのお母さんほどじゃないと思うけど」
「……そうね」
時計を見ると、思いのほか時間が経過していた。
「そうだ、てれす」
「なにかしら」
「さっきの話なんだけど」
勉強もちょうどいいところで終わったし、集中力が切れてしまったので、てれすに話かしる。
「てれすは、何かやりたいこととか、ある?」
「いえ、特には。ありすと一緒なら」
「それじゃあ、そのうちで決めようか」
「ええ」
うなずいて、てれすは「ふあぁ」とあくびをした。口元を右手で隠しているてれすの所作が、なんともお上品に見えた。口元を隠すのはみんなすると思うけど、てれすはすごくお上品で様になっていた。さすてれである。
「てれす、眠たいの?」
「あ、いえ。別に」
「嘘つかなくてもいいよ?」
「……少し」
「いつもは、どのくらいに寝てるの?」
もしかすると、てれすは就寝時間が早いほうなのかもしれない。そうならば、お泊り会だからと言って勉強していたけど、すぐにてれすに合わせて寝る準備をしたほうがいいだろう。
「一時とか、そのあたり」
「そうなの?」
「ええ。だから、いつもこんな感じではないわ。今日は、その。楽しみで、昨日あまり眠れなかったから……」
「そうなんだ……」
そんなに楽しみにしてくれていたことに、嬉しくなってしまう。
「ごめんなさい」
「ううん。謝らないでよ。わたしもすごく楽しみだったし。実際楽しかった。少し早いけど、寝る?」
「いいの? 早すぎないかしら」
まだ10時半くらいで、寝るために歯磨きとかお手洗い、布団の準備をすませたとしても11時を過ぎるかどうかくらいだろう。
体調不良の時を除けば、こんなに早く寝るのは中学校の修学旅行以来かもしれない。
「そうだなぁ、それじゃあ枕投げでもする?」
「いえ、さすがにそれは……」
てれすに渋い顔をされてしまい、結局、てれすがもう一度あくびをしたので、寝ることにした。
一階に下りてやることを終わらせて、わたしの部屋に戻って来る。
そして布団を敷いて、てれすに尋ねた。
「てれす、上と下どっちがいい?」
「え? わたしが下じゃないの?」
「ううん。別にてれすがわたしのベッドで寝てもいいよ」
「ありすのベッド……」
こういう会話をすると、初めててれすがうちに遊びに来た時のことを思い出す。緊張していたからか、てれすは最後眠ってしまったのだ。
少しの間悩んで、てれすは首を振った。
「いえ、いいわ。ありすはありすの布団で寝て?」
「わかった」
電気を消して、わたしとてれすは就寝することにした。
「おやすみ、てれす」
「ええ、おやすみなさい」
真っ暗の中、何も見えないけど、すぐ近くにてれすがいると思うと不思議な気分になる。いつも寝る時間よりも早いから、寝られるか心配だったけど、瞼を閉じるとわたしの意識は夢の中に旅立っていった。




