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ありすとてれす  作者: 春乃
121/259

121話 期末テストの約束

 パジャマやらタオルやらを抱えて、わたしはお風呂場に向かう。

 階段を下りると、リビングからお母さんの声が聞こえた。


「ありす、そんなに急ぐと危ないわよ」


「あ、はーい」


 素直に返事をして、ゆっくり廊下を歩く。

てれすの姿にドキッとして、慌てて下りてきたとお母さんに知られたら、どんなふうにからかわれてしまうか、わかったものじゃない。

 脱衣所の扉を開けると、先に誰かが使っていた感じが残っていた。わたしは基本的に、いつも一番にお風呂に入っていたから、なんだか不思議な感じだ。先に入ったのがてれすというのも、さらに不思議な感覚を増させる。


 服を脱いで、二番風呂に突入。

 お湯はまだ温かくて、ポカポカしていた。


「あー」


 と自然に声が零れてしまう。

 湯船に浸かったことで気が抜けたのか、脳裏にふと、さっきのてれすの姿が浮かんだ。水も滴るってわけではないけど、いつも美人なてれすのことがさらに素敵に感じられた。


 ぶくぶくぶく。

 お湯に息を吐く。

 が、


「――ッ!?」


 わたしは思わず立ち上がった。

 今、特に意識することなくお湯をぶくぶくしたけど、このお湯って……。

 

「バカバカ。わたしのバカ!」


 変なことを考えてしまっている自分に気づいて、首をぶんぶんと横に振る。

 心頭滅却。心頭滅却。

 一度頭を冷やさなくては。

 なんだか暑い。

 それはお風呂のせいじゃない。夏の暑さのせいでもない。


 結局、わたしはいつもよりも早くシャンプーやリンス、などなど必要なことを終わらせて、早めにお風呂から出ることにした。

 

 パジャマに着替えて、自分の部屋に戻る。

 わたしの部屋に一人でいるてれすは、何をしているのだろう。

 さすがに寝てるってことはないと思うけど、携帯を触っているのは想像できないし、かといって勉強というわけでもないはず。もしかすると、何もしていないのかもしれない。


 いろいろと思案を巡らせながら自分の部屋に戻る。


「てれす、ただいま」


「ありす、おかえり」


 そう返してくれたてれすは、本を読んでいた。

 わたしの本棚にある、少女漫画の単行本の一巻だ。


「てれす、それ」


「あ、ごめんなさい。勝手に」


「ううん。いいよ。でも、てれすがマンガを読むなんて意外かも」


 本棚には、マンガ以外にもある。

 どれを読まれても、別に困るようなものはないから問題はない。けど、てれすがマンガを選ぶのは意外だった。


「そうね。ちょっと、読んでみようかなって」


「どうだった? よかったら、貸すけど」


「いえ、それは大丈夫よ」


「あ、そんなにおもしろくなかった?」


「そういうわけでもないのだけれど、あまりマンガを読んだことがないから、よくわからなかった、というのが正直なところかしら」


「そっか」


「ええ」


「あ、でも、もし何かわたしので借りたくなったら、いつでも言ってね」


「ええ。ありがとう。でも、借りたくなったら、ありすのうちに来てもいいから」


「もちろん! 何もなくても来ていいよ!」


「それは、どうなのかしら……」


 苦笑を浮かべるてれすを見つつ、ちらりと時計を見る。

 夜はまだまだこれからだ。


「てれす、このあとどうしよっか」


 今日はお泊り会になっているとはいえ、本来の目的は期末テストに向けての勉強会だ。だから、勉強をしてもいいけど、せっかくだから、お泊り会っぽいことをしたい気持ちもある。


「わたしは、なんでも」


「うーん。それじゃあ、あと少しだけ勉強する?」


「そうね」


「ああ、そうだ。そのことなんだけど」


 わたしが言うと、てれすは首を可愛らしくかしげる。


「てれす、前回の中間テストで学年1番だったよね?」


「ええ」


「だから、期末テストでてれすとわたしが1番2番とかになれたら、何かお祝いみたいなことしたいなって」


「お祝い?」


「そう。さっき思いついたから、まだ何も決めてはないんだけど」


 夏休みもてれすと会うにはどうすればいいのか。そのために思いついた作戦の一つであった。


「ダメかな」


「いえ、やりたい。いいと思うわ」


 即答するてれす。

 大きくうなずいてくれて、嬉しくなる。


「やった。がんばろうね」


「ええ。がんばるわ」


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