表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありすとてれす  作者: 春乃
120/259

120話 お泊り会お風呂

 夕飯を食べ終えたわたしとてれすは、わたしの部屋に戻ってきた。


「てれす。お風呂、先に行っていいよ」


「え?」


「どうしたの?」


 お風呂がすでにできていることは、さっきお母さんが言っていたので、まさか聞き返されるとは思わなかった。

 一緒に入るかと聞かれて、わたしが全力で否定したので、てれすが聞き逃していたということはないはず。ということは、何かいけない理由があるのだろうか。


「もしかして、なにか忘れた?」


「いえ、大丈夫だと思う――あ」


 そう言って、てれすは自身が持ってきた荷物を探る。そして、困ったような表情をしてわたしを見た。


「寝るとき、どうしようかしら」


「お布団だよ」


「いえ、そうではなくて。着るものを忘れてしまって……」


「それなら――」


 わたしのパジャマを貸してあげるよ、と言うよりも早く、てれすが何やら思いついたようで、口にする。


「さすがに裸で寝るわけにもいかないわよね」


「当然だよ!」


「そうよね。わたしはいいけれど、さすがにありすのお家のお布団で寝るのに、裸は申し訳ないわ」


「そういう理由なの!?」


 思わず、やや大きな声が出てしまった。

 つまり、わたしの家でなく、てれすの家でなら、てれすは裸ということだろうか。同時に変な想像をしてしまって、首を振る。

 わたしのためにも、ぜひとも服を着ていただきたい。


「最近暑いから、なんとかなるんじゃないかしら」


 どうやら、てれすは本気で言っているようだった。

 わたしに服を借りるという選択肢はないみたい。


「もしかして、てれす。お家ではいっつも裸で寝てるの?」


「いえ、違うわ。ちゃんとパジャマよ」


「よかった、のかな……。わかんないけど、今日はわたしのパジャマを着てよ」


「あ、ありすの?」


「うん、わたしの。嫌でも、それしか方法はないから……」


 お父さんのってわけにはいかないし、お母さんのどうだろう。お母さんは喜びそうだけど、てれすが気を遣ってしまいそうだ。それなら、わたしのものが一番いいに決まっている。


「いいのかしら」


「いいのいいの」


 わたしが言うと、てれすはこくりとうなずいた。


「それじゃあ、お言葉に甘えて。ありがとう」


「ううん。気にしないで」


「ありすの……ありすの」


 どうして二回言ったの……?

 疑問が浮かんだけど、嫌じゃないならいいや。

 それよりも、早くお風呂に行ってもらわなくては。もう準備ができているのなら、早く行ったほうがいいだろう。


「それで、お風呂だけど、先に行ってきてよ」


「その、ありす」


「なぁに?」


「二人で」


「いやいや! それはお母さんの冗談だから! 真に受けないで!」


「……そう」


 なんだか、てれすがしょんぼりしてしまった。

 でも、二人で入るわけにはいかない。恥ずかしいということもあるけど、なによりも狭い。温泉とか、てれすといくのはありかもしれない。


 そんなことを考えつつ、タンスからパジャマを取り出す。


「はい、てれす。これ使って」


「ありがとう。行ってきます」


「はーい」


 てれすが階段を下りていく音を聞きながら、わたしは自分のお風呂の準備をしてから、本でも読むことにした。

 そして十数分後。思いのほか、早い時間でてれすは帰ってきた。


「ありす」


「あ、てれす。おかえり」


「ええ。次、入りなさいって、ありすのお母さんが」


「はーい」


 さっき準備していたパジャマたちを持って、部屋を出ていこうとてれすの隣を通った時、ふわりと、いつも自分が使っているシャンプーの香りが漂ってきた。昔から使って慣れ親しんだ香りのはずなのに、てれすから同じ香りがしたことに、ドキリとしてしまう。

 さらに、濡れた髪をタオルで乾かし、ほんのり頬を紅潮させたてれすの顔を見てしまって、なんだか見入ってしまった。


「ありす?」


「あ、ううん、なんでもないよ! それじゃあ、いってきます」


「え、ええ」


 てれすは首をかしげていたけど、わたしは急いでお風呂に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ