12話 わたしとペアになろ?
たしかに、てれすとペアを組む人となると、クラスにはいないだろう。
余り者どうしで組むことになると、その人が可哀想だ。
いや、わたしはいいんだけど。むしろそれを望むのだけど。
4時間目の様子、わたしたちがサボりから帰ってきたときのクラスの反応を見るに、他の人と組むのは難しい。
今こうして話していると、てれすはとってもいい子だ。
でも、階段で初めて話したときのてれすを思い出すと、無理だろう。
ちょっと怖いもんね。
わたしよく話しかけたよ。と、今になって思う。
てれすはクラスで誤解を受けまくっている。
サボり魔だし、寝てるし原因はてれすにもあると思うが。
となると、選択肢は、一つだ。
もとよりそのつもりだったけれど。
「わたしとやろうよ、テニス」
わたしが言うとてれすは驚きつつも少しだけ喜びの色を浮かべる。
が、すぐにそれが不安そうなものに変わる。
「でも、約束とか、すでにあるんじゃ……?」
「ないよ。大丈夫。わたしとやろ?」
どうやらわたしの心配をしてくれていたらしい。
わたしがにこっ、と微笑むとてれすの表情がぱぁ、と明るくなった気がした。
てれすは嫌なこと以外、というより、わたしと2人のときじゃないとほとんど顔に出さないので、表情がなんとなくしか読み取れない。
だから、気がした。
「え、ええ。それなら」
これでペア成立である。
よぅし、がんばるぞ。
どうせなら優勝を目指しちゃうよ?
「そういえば、あなた、テニスしたことあるの?」
てれすが訊ねてくる。
たしかてれすはテニスができると言っていた。
だからわたしは胸を張ってこう答える。
「え? ないよ、一度も」
正直。ルールも知らない。
野球やサッカーなら、テレビでちょっとだけなら観たことがあるので、なんとなくならわかる。が、テニスに関してはまったくの無知である。
たしかラケット? で相手のところにボールを返せばいいんだよね?
てれすの笑顔が固まる。
「ってことはラケットに触ったことも?」
「ないよ、一度も」
てれすはふぅ、と大きく息をはくと、完全なるわたしでも見抜くことのできた作り笑顔をわたしにむける。
「ま、まぁ、がんばりましょ? きっとなんとかなるわ」
「そうだよね。大丈夫だよね?」
「…………」
「なにか言ってよ!?」
と、ちょうどこの重苦しくなりそうな空気に昼休み終了を知らせるチャイムがなった。
だ、大丈夫……だよね?




