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ありすとてれす  作者: 春乃
118/259

118話 テスト勉強と夕飯

「じゃあ、てれす。問題ね」


「ええ」


 手に持っている現代文の先生がまとめてくれたプリントに目を落として、てれすに出す問題を探す。


「一心不乱と同じような意味で、漢数字の一から始まる四字熟語は」


「一意専心、かしら」


「正解」


 プリントの答えを確認する。

 もちろん、てれすの回答は正解だ。


 現国の勉強は、まずプリントの空欄をそれぞれ埋めてから、答え合わせをした。それからしばらく問題の出し合いっこをしていたので、問題が尽きてしまった。

 当日に出そうな問題を予想して出題することもできるけど、テストは現代文だけではないので、ここは違う教科の勉強をしたほうがいいだろう。


「国語はこんなものかな」


「そうね」


「それなら、次の教科は……」


 期末テストの予定表を見ようと、カバンから取り出したタイミングで一階の方からガチャリと鍵が回る音が聞こえた。

 どうやら、お母さんが帰ってきたらしい。

 続けて「ただいまー」と言う声が聞こえてくる。


「ありすのお母さん、帰ってきたわね」


「そうだね」


 時計を見て見ると、思いのほか時間が経過していた。

 当初の予定では、お母さんが帰ってくるまでにもう一教科くらいはやるつもりだったんだけど、始めるまでに時間がかかってしまったから仕方ない。

 布団を干すのも、おやつタイムもとても大切なことだ。


 さて、次の教科の勉強をしようとしていると、階段を上がって来る音が聞こえた。そして、ドアがノックされる。


「ありす、てれすちゃん?」


「どうした?」


 ドアを開けると、そこには帰ってきたばかりのお母さんが立っていた。何の用事だろう、と首をかしげるとお母さんは苦笑して言った。


「生きてるかなって思って」


「そりゃ、生きてるよ」


「そうね。静かだったからね」


「勉強してたから」


 わいわい騒ぎながら勉強はできない。もしかしたらできるのかもしれないけど、わたしとてれすはそういうタイプではない気がする。

 でも、お母さんが帰って来た時に「おかえりなさい」くらいは言うべきだったかもしれない。


「休憩はちゃんとした?」


「うん」


「そう。それならいいけど。あ、そうだ。もう少ししたらお母さんは夕飯の準備するけど、てれすちゃん、苦手なものとかある?」


 尋ねられて、てれすは少し思案してから首を横に振った。


「いえ、特にはないです」


「カレーにするつもりだけど」


 カレー、というお母さんの口から発せられた単語に反応する。

 とても魅惑的で魅力的な言葉が聞こえた。


「今日カレーなの!?」


「え? うん。嫌だった?」


 いきなりわたしが話しかけから、お母さんが困惑した表情になる。


「ううん、すごくいいと思う」


 お泊りと言えばカレーライス。林間学校のときに食べるカレーライスの美味しさは特別なものがあると思う。もちろん、普通にお家で食べるカレーも格別だ。

 わたしはカレーが好きだと胸を張って言える。


「てれすちゃんも、いい?」


「はい」


「それじゃ、夕飯ができたらまた呼ぶわね」


 そう言って、お母さんは一階に下りていった。


「ありす?」


「あ、ごめん」


「……ありす、カレー好きよね」


「うん、好き」


「オムライスも好きよね?」


「好き」


「一番好きなのは何なの?」


「一番?」


「ええ」


 一番か……。

 そう言われると、悩んでしまう。

 カレーやオムライスはもちろん、美味しいものは何でも好きだ。ご飯系だけでなく、甘いものも好きだし……。


 あごに手を添えて頭を悩ませていると、ふいに回答を待つてれすのことが名に入った。

 そういえば、前にもこんな会話をしたことがあるような気がする。


「あ、そうだ」


「なに?」


「てれす」


「へ?」


「一番はてれす――なんちゃって」


 冗談のつもりだったけど、てれすの反応に慌てて訂正する。


「え、わ、わたし……?」


「あ、いや! 違うから! 冗談、冗談だから!」


「じょ、冗談……」


「そう。冗談だよ」


「そう、冗談ね……」


「食べ物の話だもんね! カレー、カレーだよ!」


 あはは、と乾いた笑い声が出る。

 まさか、真に受けられるとは思わなかった。でも、てれすはまじめって言うか素直だから受け取ってしまったのだ。

 もちろん、てれすのことは好きだけど、今回聞かれていたのは食べ物のこと。

 てれすは食べ物じゃない。はず。


「えっと。夕飯までがんばろっか」


「ええ、そうね」




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