115話 勉強会……の前に
勉強会を開始すべく、わたしとてれすはわたしの部屋へと戻ってきた。
いざ期末テスト対策の勉強……と言いたいところだけど、まずはてれすのお布団を干しておかなければならない。今日は日差しポカポカなので今のうちに干しておけば、夜には気持ちよく眠れると思う。
「てれす、ゆっくりしてて?」
「ええ。あ、わたしも手伝ったほうが」
「ううん、大丈夫だよ」
「そう?」
「うん」
てれすの手を借りるわけにはいかない。
わたしは自分の部屋の向かいにある、誰も使っていない部屋に入る。
普段は物置のように使用されている部屋だけど、綺麗に片付いていた。さっそく布団を引っ張り出そうと、押し入れを開けたそのときだった。
「きゃあ!?」
中に入っていた色々なものが雪崩を起こして、わたしに覆いかぶさってきた。
綺麗に片付いているように見えていた部屋だけど、どうやら押し入れに押し込んでいただけだったらしい。
くっ、お母さんめ。
わたしの周りに広がっている惨状をみながら、心の中でお母さんに文句を言っていると、物音を聞きつけたのだろう、てれすがすごく焦った顔をしてやって来た。
「ありす!」
わたしと、わたしを取り巻いている部屋のありさまに、さすがのてれすも驚きをかくせなかったらしい。目を見張っていた。
「ありす、大丈夫?」
「あ、てれす。ごめん、大丈夫だよ。あはは……」
「えっと、これは」
「気にしなくていいから! ノープロブレム!」
「いや、でも」
「大丈夫! さ、てれす、このお布団を干そう!」
てれすに変な気を遣わせるわけにはいかない。
なんとか勢いで誤魔化そうと、わたしは布団を持ってこの部屋を出ようとする。
「痛っ!?」
足下に目をやると、どうやらアルバムの角を踏んでしまったらしい。
薄っすら涙を浮かべるわたしに、てれすは苦笑いを浮かべていた。
「ありす、落ち着いて……」
「うん」
布団を手に持っているため、足元はあまり見えないけど、てれすを心配させないためにも気を付けて部屋を出る。
「ごめんね、てれす」
「いえ、大丈夫よ。やっぱり、わたしも手伝うわ」
「うん。お願い」
始めから、意地を張らずにてれすに手伝ってもらえばよかった。
てれすに敷布団を預けて、わたしは掛け布団を取りに戻る。
「てれす、毛布いる?」
「いえ、いらないわ」
「そう? 遠慮とかじゃないよね?」
「ええ。大丈夫よ」
普通に考えると、季節はほぼ夏で暑いけれど、冷え性ならクーラーでも辛いだろう。せっかくのお泊り会なのに、楽しめなくなるのは嫌だ。
だけど、どうやら遠慮ではなく、本心で言っているみたいなので、毛布は押し入れの中でそのままにしておく。
「じゃ、ベランダはこっちだから」
てれすをベランダに案内して、二人で布団を干していく。
万が一、風に飛ばされたり、床に落ちたりしないように大きな洗濯ばさみで留めて、ようやく布団を干すのが終わった。
「いや~、てれすありがとね」
「いえ」
思いのほか時間がかかってしまって、勉強会を始める前にぐったりしてしまっている。
これは少し休憩をしなくては。
「てれす」
わたしが呼ぶと、てれすは首を不思議そうにかしげた。
「おやつタイムにしよう」




