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ありすとてれす  作者: 春乃
113/259

113話 お泊り会してもいい?

 学校を終えて、わたしとてれすはいつも通り一緒に帰路についた。交差点でてれすとはお別れして、数分で自宅に着く。


「ただいまー」


 玄関に入ると、リビングからわずかにドラマの音が聞こえてきた。お母さんの靴もあるし、早いところてれすとのお泊り会のことを聞いておこう。

 靴を脱いで手洗いうがいをすませてからリビングに向かう。


「ただいま」


「あら、おかえり。ありす」


 お母さんはいつもこの時間に見ている刑事ドラマをやっぱり見ていた。なかなか盛り上がっているシーンのようで申し訳ないけど、話しかける。


「お母さん」


「なに、どうしたの?」


「えっと、週末なんだけど」


「週末?」


 何か予定あったかしら。とお母さんは首をかしげた。


「うん。土曜日と日曜日なんだけど、てれすと一緒に勉強会しようかなって」


「あぁ、そういえば、もうすぐ期末テストだものね」


「うん。それで、うちですることになって」


「そうなの。がんばってね」


 前にも一度うちではてれすと一緒にテスト勉強しているので、これだけでお母さんは特に反応しない。わたしもてれすも勉強ができないというわけではないから、そこの信頼もあるのだろう。

 それは嬉しいことだけど、今日はそうではない。


「うん、がんばる。それでね」


「ん?」


「お泊り会をしたいなぁって」


「お泊り会?」


「うん」


 わたしがうなずくと、お母さんはあごに手を添えた。

 あまり遅く伝えてしまうと、お母さんも色々準備があるだろうから迷惑になると思って今日聞いてみた。だけど、お母さんの様子からして、難しいのかもしれない。


 しかしお母さんは「うんうん」と首を縦に振ってくれた。


「いいわよ」


「ほんと?」


「ええ、もちろん。すごく楽しみね!」


「あの、あんまり張り切らなくていいよ……?」


「大丈夫大丈夫」


「いや、だから普通でいいよ?」


「お母さんにまかせないさい」


「う、うん」


 当日、お母さんにおもてなしされて、困ったような顔をわたしに向けるてれすの顔が想像できる。

 でも、お泊り会はおっけーということなので、わたしは苦笑いするにとどめた。




 その夜。ご飯屋お風呂の後。

 わたしは携帯を片手に自分の部屋にいた。

 お泊り会の許可がお母さんから出たことをてれすに伝えるためだ。明日すぐに学校で会えるから、そのときに伝えてもいいのだけど、電話をすることにした。

 きっと、てれすも気になってそわそわしているに違いない。


 連絡アプリMINEを起動して、通話ボタンをポチッと押す。

 すぐにてれすが電話口に出た。


『もしもし、ありす?』


「あ、てれす。今大丈夫?」


『ええ、大丈夫よ』


「よかった。あのね、お昼休みに言ってたお泊り会のことなんだけど」


『ええ、どうだった?』


「お母さんいいって」


『ほんと?』


「うん。お母さんもすごく楽しみにしてるみたい」


 そう話しながら、変に張り切ってしまうのはお母さんだけではないことを思い出す。

 ここでわたしが言っておかないと、てれすはきっとちょっとお高めのお土産片手にやって来るに違いない。


「てれす、変に気を遣わないくて良いからね。お土産とかいらないから」


「わ、わかったわ」


「勉強道具とお泊りセットだけでいいからね」


「ええ」


「それじゃ、また明日」


「ええ、また明日。おやすみありす」


「おやすみ、てれす」


 通話を終えると、ふふっと笑い声が零れてしまった。暗くなった画面には、微笑んでいる自分の顔が映し出されている。

 どうやら、わたしも浮かれてしまっているらしい。気を付けておかないと鼻歌を歌ってしまいそうだ。


 ……宿題や明日の時間割をして、就寝することにした。


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