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ありすとてれす  作者: 春乃
112/259

112話 梅雨明けと期末テスト

 先週、参観日が終わって新しく迎えた月曜日。

 六月も残り片手の指で数えられるほどの日数になり、昨日の天気予報では梅雨明け宣言がされていた。

 予報通り、天気は快晴。初夏になって日差しは温かいというよりは暑い。梅雨が明けたのは嬉しいけど、 これからはもっと熱くなっていくのか、と思いながら学校に登校する。

 上履きに履き替えて教室の扉を開ける。時間が早いということもあって、やっぱりまだてれすは来ていなかった。

 自分の席に着いてのんびり待つことにする。おそらく、てれすはいつも通りショートホームルームが始まる直前に来るのだろう。


 文庫本を読むこと少し。

 右手で口元を覆いながらあくびをして、てれすがやって来た。


「ありす、おはよう」


「あ、てれす。おはよ」


 眠たそうではあるけど、いつも通り綺麗で整った顔、そのおでこにはうっすらと汗も浮かんでいる。


「……ありす? どうかしたの?」


「へ? あ、いや。なんでもないよ。今日暑いよね」


「そうね。梅雨も明けたようだし」


「これから夏だね」


「ええ」


 わたしの隣に着席して、てれすはうなずく。

 金曜日の帰り道にてれすと話した期末テストの勉強会について、もう少し具体的なことを話しておきたいけど、チャイムが鳴った。

 先生もやって来たので、お昼休みにご飯を食べながらゆっくり話すとしよう。別に急ぎの話でもないし。


「はーい、みんな静かにして。まずは金曜日の参観日はお疲れ様」


 教卓の後ろに立って、先生は話し始める。


「で、そのお疲れ様のところ悪いけど、もうすぐ期末テストがあります」


 そう先生が告げると、クラスから赤川さんを筆頭にして「えー」とブーイングが起こった。その様子に苦笑をしながら隣のてれすを見る。てれすは興味なさそうに窓の外を見ていた。


 先生はブーイングを送る生徒を宥めながら言う。


「えー、じゃないわよ。学生なんだから勉強もしっかりしないと」


 そして午前の授業は進んでいって、お昼休み。

 てれすと机をくっつけてお昼ご飯をとる。購買にパンを買いに行ったてれすが戻って来てから、わたしは話を切り出した。


「ねぇ、てれす」


「なにかしら」


「その、金曜日に話したことなんだけど」


「金曜日? テスト勉強のこと?」


「うん、それ。それなんだけど、どこでやろうか?」


 わたしの家やてれすの家でもいいけれど、間を取って図書館で行うという手もある。

 わたしがてれすの家に行くのは良いけど、わたしが誘っておいてわざわざ来てもらうのはなんだか申し訳ない。


 てれすは焼きそばパンの袋を開けながら答える。


「わたしはありすのうちがいいわ」


「え、うち?」


「ええ。ダメ、だったかしら?」


「ううん。そんなことないよ。けど、いいの?」


「もちろん。その、なんていうか、わたしがありすのうちに行きたいから……」


 てれすは照れてしまったのか、すぐに焼きそばパンをもそもそと食べる。それにつられて、なんだかわたしまで、ほっぺたが熱くなってしまう。


「そ、そっか」


「……ええ」


「じゃあ場所はわたしのうちってことで。あとは日にちなんだけど、やっぱり土曜日か日曜日になるよね?」


「わたしは、毎日でも」


「いやいや。さすがにそれは……。平日はやめておこう?」


「わかったわ」


 てれすは少し残念そうにしながらも首肯する。


「どっちがいいとかある?」


「特には」


「うーん、それじゃ土曜日でいいかな?」


「ええ……あ」


「どうしたの?」


 わたしが首をかしげると、てれすは少し遠慮がちに言葉を紡ぐ。そのほっぺたはさっきよりも赤く染まっていた。


「えっと、もしよかったら、なのだけど」


「うん」


「どっちもしたいなって……」


「どっちも? それって、土曜日も日曜日もってこと?」


「ええ」


 ふむ。とわたしは思案を巡らせる。

 わたしは両日でもいいけど、というかむしろ土曜も日曜もてれすと一緒にいられるのは嬉しい。だけど、そうなるとてれすの方が面倒ではないだろうか。一回帰ってから、次の日も来るのだ。

 ……いや、待てよ? 別に帰る必要はない。そうか、その手があった。きっとてれすもそうしたいのだろう。


「そっか、お泊り会。うん、そうしよう。それがいいよ!」


「ほ、本当?」


「うん! 今日帰ったらお母さんに聞いてみるね」



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