11話 てれすとテニス
球技大会。
学年が上がり新しいクラスになったので親睦を目的に、毎年この学校ではこの時期、4月の終わりに球技大会が行われている。
各競技、クラスで練習の時間をとるために種目決めは早目にあるのだ。
たしか、競技はテニス、バスケ、バレーの3つだったはず。
去年はバレーで、こてんぱんにされたんだよなぁ……。
「それ、わたしもやらなきゃいけないの?」
「うん、全員参加だから」
露骨に嫌そうな顔をするてれす。ですよねー。
その反応はわかっていた。
そんなに眉とか歪めると美人が台無しだよ?
でもやっぱりここはクラス委員。
上手いこと参加へと誘導する。
「人数とかあわなくなったら、その、あれだし……」
なんだあれって……。
我ながら非常に力弱い。
「それに、わたしはてれすとなにかやりたいし……」
弱々しくも説得するわたしに、てれすはため息をつく。
「わかった、参加はするわ。すればいいんでしょう?」
だけど、とてれすは続ける。
「その3つだと、わたしはテニスしかできないのだけど」
へぇ~、テニスはできるんだ。
去年もテニスだったのかな?
あれ? ちょっと待って。てれす、球技大会があること知らなかったよね? てことは去年……。
とにかく、訊いてみよう。
「ね、ねぇ、てれす? 去年はなにをしたの?」
「去年? さぁ、覚えてないわ」
サボったんですね。わかります。
そういえば、去年の記憶、球技大会に限らずだけど、てれすの姿をわたしは一度も見ていない気がする。
去年はクラスが違った。が、それにしても、である。
うーん。今こうしておしゃべりをしているのは、とてもすごいことなのかもしれない。
わたしが記憶を辿っていると、ふいにてれすが、あっ、と声をあげる。
「テニスって、ダブルスよね?」
「え? うん、そうだよ」
協力的なことで、親睦が目的だから、シングルスはない。
するとてれすは深刻そうに顔をうつむける。
「……わたし、組んでくれる人がいないわ」




